クレームで心を病んでしまう公務員もいる
クレームによるストレスで心身を壊す人も実際にいます。
サービス業には避けて通れない公務員のクレームについて現役市役所公務員が解説します。
市役所の窓口を訪れる人は多かれ少なかれ「クレーム(=要求)」を持っている
クレームは「不平・不満」という意味で捕らえられがちですが、クレーム(claim)の本来の語源は「要求」という意味です。
「税金や保険料の制度を知りたい」といった疑問も「税金を安くしたい!」という欲求の現れです。
お客様と対応する時は、「相手の要求(=クレーム)はなにか?」ということを感じ取ることが大切です。
住民のクレームには大別して3種類存在します。
タイプA「制度自体を知らないことによるクレーム」
上記のように、「何かしら不満を抱えているけど、どういった方法があるのか知らないから教えてほしい、といったクレーム(=要求)」です。
役所に訪れる9割方がこのタイプです。
単に自分が抱えている問題を解決する手がかりを求めて来庁する方です。
制度の趣旨を詳しく説明し、どういったサービスを受けることが出来るのか詳細に説明すると満足していただける事が多いです。
制度について詳しくないケースが多いため、できるだけ簡単な言葉で順序よく説明すれば納得してくれることが多いです。
クレームの中では最もソフトな部類に入ります。
ただし、ここで対応を誤ると次に説明するタイプBのクレームに発展するので要注意。
タイプB「不満が高まって感情的になるクレーム」
自分が期待している程のサービスを受けられず、不満が高まったことで生じるクレームです。
役所に来庁する方の約1割弱がこのタイプのクレームです。
感情的になっているため、論理的に話をしても納得していただけないこともあります。
このタイプと話す時は、相手の話に傾聴すること、相手の話を遮らないことがポイントです。
相手に親身に寄り添うことで怒りを緩和できます。
このタイプは、自分の発言が正しくない・論理的でないことを自分で薄々感じてはいますが、役所の対応や規則が冷酷すぎるために生じるクレームです。
発言者の感情を汲み取ることによって徐々に冷静になることが多いです。
最初は「ふざけるな!」と怒っている方でも、最後には「さっきは悪かったね」といっていただけることもあります。
こういったお客様に満足してかえっていただけるように対応するのがサービス業の腕の見せ所だと思います。
タイプC:「利益を得るためにあえてクレームを言う人」
ルールに違反していることを知りつつも、役所側の譲歩を引き出すためにあえてクレームをいうタイプです。
このタイプが最も厄介だと思います。
利益を得るために悪意を持って対応してくるため、論理的な説明や親身に傾聴するという手段は一切通用しません。
むしろクレーマーに合わせるほど、増長していく傾向にあるので毅然とした対応をする必要があります。
私が対応したお客様でも2時間以上同じ内容の質問を繰り返し、暴言などを吐かれるというケースもありました。
クレームへの対応策
知識をつけること
法制度の知識を持っていれば、ほとんどの「要求(=クレーム)」に答えることが可能です。
中には「法律の第何条にかいてあるんだ!!」と聞いてくる方がいらっしゃいます。
そういうときに「法〇〇の△条で定められています。」と毅然と返せるかどうかで相手の出方は大きくかわってきます。
ここでしどろもどろすると、クレーム対応がより泥沼化います。
日頃から知識を身に着けておくと命拾いすることが多いと実感します。
ケーススタディを学んでおく
知識としてはわかっていても、いざクレームに遭遇するとテンパってフリーズしてしまうことも多いです。
あらかじめ「Aという質問が来たら、Bという対応をする」ということを想定しておくと、本番でもうまく対応できます
クレーム対応中は上司との連携を密に行うこと
激しいクレームの対応時は上司との連携を密に行ってください。
個人の判断で対応した結果、あとからより大きな問題を引き起こすことがあります。
個人の判断ではなく、上司を経由して組織としての対応を行うことで、クレームに対処しましょう。
どうしても職務環境に耐えられなければ休職する!
クレームにさらされる職場環境が辛ければ、伝家の宝刀である休職制度を利用しましょう。
休職制度ときくと、取得するのに戸惑うかもしれませんが、本来職員の心身を守るために存在している制度です。
後ろめたく感じずに堂々と使用すべきだと思います。
公務員の休職制度は、最長3年間利用できますし、復帰後はクレームによるストレスの少ない部署へ配置転換してもらえることもあります。
詳しくはこちらの記事で紹介しています。
クレームを必要以上に恐れる必要はない
公務員のクレーム対応を紹介してきましたが、クレームを必要以上に恐れることはありません。
日常生活の友人との会話でもちょっとした食い違いなどのクレームは存在します。
また、公務員だけでなく民間企業の仕事でもクレームは存在します。
むしろ、法律で職務の権限を定められている公務員の方が手厚い保障をされています。
メディアに取り沙汰される一部の強烈なクレーマーの印象が強いですが、実際そういったケース非常に珍しいです。
「公務員になると常にクレーマーに絡まれて大変。ずっと税金泥棒などと批判され続ける」
、、、なんてことは全然ありません。
クレーマーの方は確かにいらっしゃいますが、それだけの理由で公務員を目指すのを諦めてほしくはないです。
公務員人生にとってクレームは台風みたいなもの
長い役所人生では、どんな人でも必ず多くのクレームに遭遇する場面があります。
中には、こちらに全く落ち度のない理不尽なものもあります。
いわば急に現れる「台風」みたいなものです。
台風には正面から立ち向かわずに過ぎ去るのを待つというのも一つの手段です。
また、公務員として働く中で感じるのが、
「クレームを完全に避けるよりも、クレームを受けたときに持ち直す力のほうが大切だ」ということです。
そのためには、趣味などを持ってストレス発散出来る環境を整えておくことも効果的です。
公務員の趣味についてはこちらの記事でまとめています
それでもやっぱりクレームが不安だという人は、こちらの記事をご覧ください。
おすすめのクレーム対応本を紹介しています。
(クレームはケースごとの対応策(=ケーススタディ)を知っているかどうかで、対応力に天と地ほどの差が生まれます)
まとめ
公務員の仕事をしていく中でクレームには必ず遭遇します。
クレームの種類に応じて適切な対応を取る必要があります。
ご覧頂きありがとうございました。