こういった疑問にお応えします。
なんて声もちらほら聞きますが実際はどんな部署なのかご紹介します。
生活保護課の仕事
生活保護課の仕事は、憲法第25条に基づき「健康で文化的な最低限度の生活」を実現するための仕事です。
具体的には、精神的・肉体的・社会的に問題を抱える個人や家族に対して、支援を行うことです。
また、生活保護課でこれらの業務にあたる人をケースワーカー(CW:Case Worker)と呼びます。
ケースワーカーとは
精神的・肉体的・社会的な生活上の問題をかかえる個人や家族に個別的に接し、問題を解決できるように援助する人のことを指します。
このケースワーカーが行う仕事には例えば以下のようなものがあります。
- 電話・窓口相談や家庭訪問による支援
- 生活保護費の計算・支給
- 支援に必要な関係機関(病院や児童相談所など)との調整業務
ケースワーカーは、自分が担当する生活保護受給者の実情に応じてこれらの職権を行使して支援を行います。
電話・窓口相談や家庭訪問による支援
生活保護課のケースワーカーは、電話や窓口で生活保護希望者の方の申請や相談を受け付けます。
また、ケースワーカーは生活保護受給者を支援するために、家庭訪問をして生活保護受給者の社会復帰状況を観察します。
家庭訪問は受給者の状況に応じて、だいたい1月〜3月に1回程度、定期的に訪問を行います。
生活保護費の計算・支給
生活保護課のケースワーカーは、法令規則に則って生活保護受給費用の計算や支給をのために事務仕事を行います。
毎月1回にかけて生活保護費を支給します。
また、生活保護費の不正受給がないかどうかのチェックなども行います。
受給者の支援に必要な関係機関(病院や児童相談所など)との調整業務
生活保護では、保護が必要な受給者の方の支援のため、病院などの医療機関や子供の保護のために児童相談所と連携して支援を行います。
病気などで入院が必要だったり、虐待などで保護が必要なケースもあるため、どうしても市役所単体では対応しきれないケースも多いからです。
こういった関係機関との調整を主導して行うのも、ケースワーカーの大切な仕事です。
生活保護課の仕事は国から委任された法定受託事務
生活保護課は基本的に各市区町村の役所に存在する部署です。
(つまり、都道府県庁や国の機関には存在しない課です。)
基本的に各市区町村の役所が国から法定受託事務として委任された事務です。
法定受託事務とは?
国が本来果たすべき役割にかかわる事務を都道府県・市町村・特別区が受託して執行する事務を指します。
要するに、
「本当は国がやらなくちゃいけない仕事だけど、数が膨大すぎて手が回らないから各市区町村の役所さんよろしくね〜」
というノリのお仕事です。
そのため、国や都道府県庁から市区町村の役所に対して、定期的に事務の監査などが入ります。
ケースワーカー1人で80〜120世帯程度を担当することが多い
生活保護課のケースワーカーは職員1人あたり80~120世帯ほどを担当するケースが多いです。
週5日で8:30~17:15という勤務時間の中で生活保護受給者にきめ細かい支援を行うにはこのくらいが限度だからです。
そのため、生活保護者数が多い自治体でも少ない自治体でも、担当する世帯の数は自治体によってそこまで数は大きく変わることはありません。
役所・街の規模によって生活保護の担当数は若干異なりますが、概ねこのくらいの人数を担当するのが一般的です。
生活保護課がキツいと言われる理由はいわゆる3Kで精神的ストレスが多いから
生活保護課がキツいと言われる理由は、生活保護課がいわゆる3Kで精神的ストレスが多いからです。
- 汚い
- 臭い
- 危険
- 精神的ストレスが大きい
【生活保護課がキツい理由①】汚い
生活保護課がキツい理由のひとつ目は生活保護課の仕事は汚い仕事が多いからです。
生活保護かのケースワーカーは、生活保護受給者の身の回りのお世話をする必要が生じるからです。
例えば、自宅にペットボトルに糞尿を溜めて生活している方のゴミ掃除をしなくてはいけないこともあります。
(ちなみにこの話は、私の市役所の生活保護課の同僚から聞いた実話です。)
【生活保護課がキツい理由②】くさい
生活保護課では臭い場面に遭遇する機会が多いです。
生活保護受給者の方は、経済的・家庭的な様々な事情で身なりを清潔に保てない事情を持っている方の割合が多いからです。
市役所の窓口にいらしている方でも少し匂いのする方の割合は多い傾向にあります。
【生活保護課がキツい理由③】危険
生活保護課の仕事は危険が伴うことも多いです。
受給者の方が暴力沙汰を起こすこともあるからです。
私の市役所の女性同僚が、自宅訪問を拒否する受給者から「自宅に来るなら襲うぞ?」と脅されたケースもあります。
【生活保護課がキツい理由④】精神的なストレスが大きい
- 亡くなる受給者がいる
- お金に関することは受給者も必死
亡くなる受給者がいる
生活保護課でケースワーカーをしていると、担当していた方が亡くなるというケースがあり精神的な負担が大きいです。
ケースワーカーが亡くなった方の第一発見者となるケースも珍しくありません。
自分が担当して日頃から関係性のある方が死んでいる光景を目の前で見ることのストレスは非常に大きいです。
お金に関することなので受給者も本気
「普段温厚な人でも、お金のこととなると人が変わってしまう」
これは私が生活保護課の実態を知るのにとてもオススメしている「健康で文化的な最低限度の生活」という漫画で語られていた象徴的なケースです。
日常生活で必要なお金に関することとなると、受給者の方は怒鳴ったり泣いたりなだめすかしたりで、精神的に消耗する機会が非常に多いです。
こういったキツい遭遇する割合は市役所の他の部署よりも生活保護課の方が多いと実感します。
こういった事情から市役所の生活保護課はキツいと言われます。
生活保護課のリアルな内情
生活保護課の労働環境をひとことで表すと、「残業時間はそこまで多くないし休みも比較的取りやすいけど、勤務中のストレスは多い職場」です。
生活保護課の仕事は面白い
生活保護課の仕事は面白い面も多いです。
役所は窓口や事務仕事がメインなので、生活保護課のように外回りをする部署は珍しいです。
また、受給者の方の人生や悩みを垣間見ることができるため、受給者を通して社会問題などを垣間見ることができます。
さらに、支援活動を通して社会復帰した人から感謝されることもあり人からののありがたみを感じられる面白さもあります
実際に、生活保護課の仕事が好きで10年以上同じ部署にとどまっている職員が私の役所にも数名います。
役所の生活保護課あるあるネタについていくつか紹介します。
生活保護課の服装は私服が基本!
生活保護課は私服が基本です。
生活保護受給者の自宅を訪問した際に、近所の人に生活保護を受給していることがわからないようにするためです。
昨今のニュースで分かるとおり、生活保護受給者に対する世間の風当たりは強いです。
もしスーツで正装した人が頻繁に家を訪問していたら
と思われてしまいます。
そういったプライバシーを配慮するために、あえてスーツのような正装ではなく私服で翻訳勤務するのが日常となっています。
むしろ生活保護課にとっては、私服が正装なのです!
車や自転車などもスーツ
ちなみに、受給者の自宅を訪問する際は自転車や公用車なども役所のマークが一切入っていないものを使用します。
プライバシーの配慮にはそのくらい敏感に対応しています。
生活保護課への配属ルートは役所によって異なる
生活保護課という部署にどのような人材が配属されるかは役所の人事計画により異なります。
生活保護課に配属されるルートは大きく分けて3パターンに分かれます。
- 「事務職」として採用された後に、ランダムで生活保護課に配属される
- 「福祉職」や「ケースワーカー職」として、生活保護課に配属することを前提に採用されるケース
「行政職」や「福祉職」からランダムに配属されるケース
ひとつ目のパターンは、役所に採用された後に行政職や福祉職など一括りにしてその後ランダムに生活保護課に配属されるケースです。
多くの役所がこの配属パターンで、私の勤めている市役所でもこのパターンが採用されています。
という事務職が毎年決まって発生します。
「福祉職」や「ケースワーカー職」として、生活保護課に配属することを前提に採用されるケース
ふたつ目のパターンは、あらかじめ決められた職種の中から生活保護課に配属されるひとを決めるケースです。
このパターンでは、就職するがわもケースワーカーとして働くことを覚悟して入庁している人がおおくミスマッチが生じにくいです。
実際に、福祉職で採用された人はケースワーカーとして困っている人を助けたいと熱い想いを持っている人が非常に多いです。
生活保護課の残業時間は役所の中では比較的少ない
生活保護課の残業時間は役所の中では比較的少ない方です。
私の周囲では、月の残業が0時間〜20時間程度の人が多いです。
ただし、生活保護課は担当地区によって担当者が決められており、担当している人との手続きが長くなれば休日出勤をしている人もいます。
個人の裁量によって決まる面が非常に大きい部署だといえるでしょう。
手を抜こうと思えば早く帰れるし、受給者とことこん向き合おうと思えばいくらでも残業できてしまうお仕事です。
生活保護課のお仕事を詳しく知るのにおすすめの本
生活保護課のリアルな内情についてもっと詳しく知りたい人はこれらの本がおすすめです。
【おすすめの本】健康で文化的な最低限度の生活 / 柏木ハルコ
おすすめ度(5.0/5.0)
この本は現役公務員の私からしてもめちゃくちゃオススメです!
生活保護課がどんなものか知るのにも役立つだけでなく、それ以外の役所のリアルな雰囲気や人間模様も忠実に再現されているからです。
この漫画のタイトルである「健康で文化的な最低限度の生活」は、日本国憲法第25条に規定された生存権をあらわしています。
市役所の生活保護課にケースワーカーとして配属された新米公務員と、生活保護受給者との人間模様を描いた作品です。
この漫画の良い点はとにかく役所の現実がリアルに再現されているところです。
- 生活保護課配属された新卒公務員たちの落胆ぶり
- 役所の窓口で暴言を吐く生活保護受給者も実は疎外感を感じており、敵対的な態度をとっている
- 窓口で怒鳴り散らす生活保護受給者 vs それを見下す公務員
- お役所仕事に徹する事なかれ主義の管理職 vs 受給者のために頑張ろうと必死に足掻く担当者
- 決して悪気はないんだけどナチュラルに上から目線で若干鼻につく都庁職員
役所で働き始めてから感じる心理的な葛藤や組織の問題点・違和感を見事に再現しています。
決して綺麗事だけでは語れない汚い部分やリアルな内容を描いているので、生活保護課に関心のない人にもめちゃくちゃおすすめの本です。
【まとめ】市区町村の役所で働く人は生活保護課の仕事を知るのがおすすめです!
生活保護課は役所の中でも配属者数が多いため、たくさんの市役所職員が経験する部署です。
そのため、生活保護課への配属を希望しない人でもこちらの本で実情を覗いてみるのがおすすめです。
ここまでご覧いただきありがとうございました。