こういった疑問にお答えします。
特別区では、事務系や保健師など主要な職種では教養論文試験が必ず課されます。
この論文試験が合否を左右するといっても過言ではありません。
今回は特別区の論文試験で出題されるテーマの解説だけでなく、合格点を取るための具体的な学習法についても紹介していきますよ。
本記事は特別区人事委員会の試験を10番台で突破し、 区面接を1位で合格した筆者が解説します。
本記事の内容
- 特別区の論文試験の特徴やテーマがわかる
- 特別区の論文試験で合格点を取るコツがわかる
- 特別区の論文試験のおすすめの学習方法がわかる
なお、本記事では特別区論文の模範解答をまとめた特別区小論文の模範解答集を紹介しています。
特別区の論文試験で合格レベルに達したい方は以下のリンクからご覧ください。
それでは順番に解説していきますね。
- 特別区の論文試験とは?
- 特別区で教養論文が課される職種
- 特別区の論文と職種別の出題傾向
- 特別区論文で出題されるテーマ
- 特別区の試験で論文対策が重要といわれている理由
- 特別区の論文試験の解答時の注意点
- 特別区論文の解答ポイント
- 特別区の論文は難しい?
- 特別区論文の出題傾向の変化
- 特別区の論文が「特別区職員の行動」を出題するようになった理由
- 特別区論文の課題文の構成
- 特別区の論文で取り扱われるテーマは?
- 特別区の論文テーマは時勢を反映している
- 特別区論文のテーマの出題傾向と予測
- 特別区論文の構成方法
- 特別区論文の解答時の注意点
- 特別区の論文で好まれる政策
- 特別区の論文で高得点を得るポイント
- ポイント①:論文は客観的に書くこと
- ポイント②:文章は短く書くこと
- ポイント③:論文は具体的に書く
- 特別区論文の注意点
- 特別区の論文の形式上の注意点
- 特別区論文の学習ポイント
- 特別区論文のおすすめの学習法
- 【補足】特別区論文の過去問はどこで入手できる?
- 【おすすめ】公務員論文添削の方法
- 特別区論文は過去問10年分ほど演習するのがおすすめ
- 【おすすめ】模範解答を読み込む
- 特別区の論文でおすすめの学習教材
- 特別区論文の教材①:市販の書籍
特別区の論文試験とは?
特別区の教養論文試験とは、主に行政課題や時事関連の話題など、特別区に関係の深いテーマにいて、見解や説明を求められる記述論文試験です。
特別区で教養論文が課される職種
1類(大卒向け)
事務/福祉/心理/衛生監視(衛生)/衛生監視(化学)/保健師
氷河期世代
事務
経験者採用(社会人向け)
事務(一般事務)/福祉/事務(ICT)/土木造園(土木)/建築/機械/電気/児童福祉/児童指導/児童心理
特別区ではほぼ全ての職種で、論文試験が課されています。
特別区の論文と職種別の出題傾向
- 事務・福祉(児童福祉・児童指導)・心理(児童心理)
→特別区の課題全般に関わる論文(=いわば教養を問われる論文)が出題される - 保健師
→特別区の課題の中で、特に保健師業務に特化した論文が出題される - 土木造園(土木)/建築/機械/電気(経験者採用のみ)
→特別区の課題の中で、特に技術系に特化した論文が出題される
例年、特別区はそれぞれの職種に関連した論文テーマが出題されています。
※令和5年度より1類技術系は論文試験が廃止された
令和5年度から、1類(大卒向け)区分の技術系職種については、論文試験が廃止されました。
これは、特別区が多様な人材を採用するために、筆記試験の難易度を下げたためです。
特別区では、専門職の人材は特に不足しているため、今後もこのような試験制度の改正が行われるものと思われます。
特別区論文で出題されるテーマ
過去の特別区論文の出題テーマの一例
- 高齢者福祉
- 女性の活躍推進
- 外国人との共生
- 効率的な行政運営
- DXの推進
- 災害対策
- 区民の健康推進
上記のとおり、特別区の論文試験ではさまざまなテーマから出題されます。
特に、事務・福祉系・心理系は、ここにあげたもの以外にも幅広い分野から出題される傾向にあります。
そのため、どんなテーマが出題されても応えられるよう、万全の準備を備えておく必要があります。
特別区の保健師論文で主に出題される分野
特別区の保健師試験では、主に「福祉」に関するテーマが出題される傾向にあります。
一例を挙げると次のような分野です。
- 高齢者福祉
- 児童福祉
- 健康福祉
- 保健予防
- スポーツ推進
このようにひとびとの健康に深く関わる分野が出題されるのが特徴です。
特別区の試験で論文対策が重要といわれている理由
特別区では論文試験が重要といわれている理由は大きく2つあります。
- 筆記試験に占める論文試験の配点割合が大きい
- 論文の出来を自分で判断するのが困難
それぞれ理由を順番に解説していきますね。
【理由①】特別区の論文は配点が大きい
そして、特別区の論文が重要であるもう一つの理由は小論文の配点が大きいという点です。
特別区はこの論文試験の配点比率が高いといわれています。
【補足】特別区の配点比率は公式には発表されていない
補足として、特別区は論文試験の配点割合を公式には発表していません。
しかしながら、特別区の採用試験は毎年実施されており、過去の受験生の記録から論文試験の配点比率を推測できます。
その結果、択一試験よりも明らかに論文試験の配点が高いことがわかります。
そして、特別区の筆記試験の配点比率は次のとおりです。
【必見】特別区論文の配点比率はコレ!
特別区論文の配点は次のような比率になっています。
教養択一:専門択一:教養論文=20%:20%:60%
このように特別区の論文配点は択一試験の3倍の比重です。
そのため、いかに教養論文で得点できるかが合否を左右すると言っても過言ではありません。
反対に、教養論文の出来が悪ければ、どんなに択一試験が良くても不合格となります。
特別区の合格を目指すあなたは教養論文対策に最も力を入れるべきです。
【理由②】論文の出来を自分で判断するのが困難
もう1つの理由は、特別区の論文は出来を自分で判断するのが困難であるという点です。
論文試験には唯一の絶対解は存在しません。
そのため、模範解答と自分の解答内容に必ず違いが生じることから、正解であるかどうかを自分で判断することが困難です。
そうすると、論文の採点方法に精通している人以外、もはや自力で採点するのは困難です。
気づかないうちに間違いを正解と思い込んでいる人も少なくないはず。
択一試験であれば、解答を読めば自分の回答が正解であるか、不正解であるかすぐに判断できます。
これが択一試験と論文試験の大きな違いです。
特別区の論文試験の解答時の注意点
- 論文の課題は2題あり、このうち1題を選択してください。
- 論文は解答用紙に記入してください。問題に記入しても採点しません。
- 解答時間は1時間20分です。
- 字数は1000字以上1500時程度です。
- 問題の内容に関する質問には、一切お答えしません。
- 問題は持ち帰ってください。
まずは特別区の論文の概要について解説していきますね。
特別区の論文試験は、例年上記のような注意事項が問題の表紙に記載されています。
この情報をもとに論文試験の特徴を紐解いていきましょう。
そしてここから特に注意すべきポイントを抜き出すと次のようになります。
特別区論文の解答ポイント
- 2題から1題を選んで回答する
- 解答用紙の使い方
- 解答時間は大卒向けで80分(経験者採用は90分)
- 論文の解答文字数は1350字〜1500字程度が望ましい
それでは順番に解説していきますね。
特別区論文試験の出題数
特別区論文試験の出題数は2題です。
そのうち1題を任意で選択して解答します。
そのため、2題の問題文を読んでから、どちらか得意な方1題を解答するという方法を取ることができます。
特別区論文の解答用紙の使い方
特別区の論文試験では、A3サイズの400字詰め原稿用紙が4枚配られます。
解答用紙には問1と問2のどちらを選択したか書く必要があるので忘れずに。
そして、解答用紙は必ず横書きで使用することとなっています。
特別区の論文試験の解答時間
特別区論文の解答時間は以下のとおり。
- 大卒区分→1時間20分
- 経験者採用区分→1時間30分
文字数に対して解答時間は標準的であり、じっくり考えてから論文を書き切るのに十分な時間があります。
特別区論文におすすめの文字数は1350字〜1500字
- 解答文字数が1000字未満→足切りor大幅減点(不合格がほぼ確定)
- 解答文字数が1000字〜1350字→減点の可能性あり(合格は可能)
- 解答文字数が1500字以上→減点の可能性あり(合格は可能)
この理由について詳しく解説していきますね。
特別区論文の文字数は1000字以上は必須
特別区論文の解答文字数は「1000字以上」と明確に指示されています。
したがって、1000字未満で回答した場合、指示無視として、足切りや大幅減点は免れません。
【特別区の論文】文字数の「1500字程度」の”程度”は無視して考えたほうが安全
しかし、厄介なのが「1500字”程度”」という言葉。
この「程度」という言葉は定性的で曖昧であり、人によって捉え方が異なるため、具体的な文字数の判断が困難です。
人によっては1500字の±2割の範囲(つまり、1200字〜1800字)であればOKという人もいます。
一方で、1500字の±1割の範囲(つまり、1350字〜1650字)であればOKという人もいます。
文字数が点数に直結するような論文試験でこのような曖昧な言葉を使うべきではない、と個人的には考えています。
結論としては、「程度」という言葉が何文字の範囲を指しているかが不明であることから、
「字数は1000字以上1500時程度」は「字数は1000字以上1500字以内」と読み替えたほうが無難である、と、私は考えています。
その上で、文字数はできるだけ1500字に近いほうが良いため、1500字の90%に当たる1350文字以上を書いておけば、安全かと考えます。
論文練習の参考にしてみてください。
特別区の論文は難しい?
特別区の論文は課題式論文ですが、他の公務員試験と比べて難しい点が1つあります。
それは特別区の論文は解決策を「特別区の職員として」述べる必要があることです。
他の多くの公務員試験では、
- 国はどのように取り組むべきか。
- 市が解決するための取組を述べよ。
といった形で、組織が取り組むべき解決策や方策を提示すれば事足ります。
しかし、特別区に関しては組織としての解決策や方策の提示では足りません。
組織の一員として働く「特別区の職員として」述べる必要があります。
そのため、
- 特別区は〇〇すべきである
- 特別区は〇〇に取り組むべきである
と言った内容では不十分です。
- 特別区は〇〇をすべきであり、そこで働く職員としては△△に取り組むべきである。
といった職員の具体的な取り組みにまで言及する必要があります。
言い換えると、「あなたが特別区の職員になったつもりで自分ごととして課題に向き合う姿勢」が問われます。
しかし実は、特別区がこのように「特別区の職員として」の取組を問われるようになったのは最近のことです。
そのため、一旦、ここまでの特別区の論文の歴史を振り返ってみましょう。
特別区論文の出題傾向の変化
見出し(上) | 特徴 | 問題文に時代背景が記載されている | 課題の要因を述べる必要性 | 職員の取り組を述べる必要 |
---|---|---|---|---|
2002年度〜2003年度 | 抽象的なテーマ | × | × | × |
2004年度〜2008年度 | 課題文に時代背景が述べられるようになった | ◯ | × | × |
2009年度〜2013年度 | 課題の要因を述べる必要がある | ◯ | ◯ | × |
2014年度〜現在 | 職員の取り組みが問われるようになった | ◯ | × | ◯ |
実は、特別区の論文は遡ってみると数年単位で出題傾向が変化しています。
時系列順に解説していきますね。
【2002年〜2003年】課題文がとても抽象的
【事務】2002年度(平成14年度)
第1問 これからの地域社会と公務員の役割
特別区で論文が出題され始めた2002年頃は、例題のようにテーマが幅広く抽象的でした。
非常に抽象的なテーマであり、多少知識があれば論じやすいものでした。
一方で、テーマが広すぎるため、具体的に何についてどう論じれば良いか迷う人もいるかもしれません。
しかし、どのような論理展開を行なっても許されてでもできるため、比較的書きやすい出題形式ではあったでしょう。
【2004年度〜2008年度】課題文に時代背景が加えられるようになった
【事務】2004年度(平成16年度)第1問
多様化する住民ニーズへの対応 国と地方の間で権限や財源のあり方の見直しが進むなど、分権型社会に向けた新たな動きが進展しています。
こうした時代の変化に対応し、多様化した住民の要望に応えるために特別区はどのような役割を果たしていくべきか、あなたの考えを論じなさい。
2年間の出題期間を経て、2004年度から問題文が若干長文化しました。
この時期には、その時々の時代背景が述べられるようになりました。
例えば、2003年には地方分権改革が閣議決定されたことを受けて、2004年の特別区のろいは地方分権改革に関連したことが出題されています。
特別区がこの課題にどのように取り組むべきかが問題として取り上げられています。
この頃から、時代の出来事とリンクした問題を出題するようになります。
そのため、受験者も課題文からある程度記述すべき内容を推測できるようになりました。
この時期は「特別区はどのような役割を果たしていくか」といった問われ方がしています。
そのため、現在出題されているテーマのように、職員一人一人の姿勢にまで言及する必要がありません。
【2009年度〜2013年度】課題の要因が問われるようになった
【事務】2009年度(平成21年度)第1問 区民が安心して暮らせる地域社会の実現
近年、特別区の区域内において、区民に不安を与える犯罪が発生し、都市生活の中で、安全・安心を求める要望が高まっています。
日常生活の中で犯罪被害に遭う不安を区民に感じさせる都市の課題を、その要因とあわせて説明したうえで、特別区は区民が安心して暮らせる地域社会を実現するためにはどうすればよいか、あなたの考えを論じなさい。
この時期の論文課題は、ただ単に解決策を述べるのでは不十分です。
ある出来事が生じた「要因や過程」を述べた上で、「解決策」を論じる 必要があります。
解決策だけでなく、出来事の要因や過程を把握していないと論述できないため、時代背景や時事に関する知識が求められます。
一方で、特別区の職員の具体的な取り組みを論じる必要はないため、総論を抑えていれば解答できるようなものでした。
実は、これは今の東京都の論文課題によく似た出題形式です。
2022年度 東京都1類B
(1)別添の資料より、首都直下地震から命と財産を守るとともに、社会経済活動の麻痺による甚大な影響を回避するために、あなたが重要であると考える課題を200字程度で簡潔に述べよ。
(2)(1)で述べた課題に対して、都はどのような取組を進めるべきか、あなたの考えを述べよ。 しかし、東京都の論文は資料等のヒントが提示される一方で、この時期の特別区の論文は資料等のヒントが一切提示されません。
※試験では、問題文のほかに資料が3点ほど提示されます。
そのため、あなた自身の知識から区政課題を述べる必要があり、知識量を求められる課題です。
【2014年度〜現在】特別区の職員としての取組が問われるようになった
【事務】2014年度(平成26年度)第1問
区民の健康志向や環境への配慮などにより、自転車の利用者がふえていますが、それに伴い、歩行者や自動車との接触事故や放置自転車の増加など、多くの問題が起きています。
このような現状を踏まえ、特別区の職員として、地域社会において自転車を安全かつ安心して利用できるまちづくりについてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
2014年度以降は課題文に「特別区の職員として、どのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい」というフレーズが常套句として述べられるようになりました。
そのため、職員の取り組みについて述べる必要が生じました。
(その代わり、2009年度〜2013年度に求められていた出来事に関する「要因や過程」を述べる必要はなくなりました。)
ここで、特別区の職員がどのように取り組むべきか?という各論的な解答を求める今の形式に変化しました。
特別区の論文が「特別区職員の行動」を出題するようになった理由
このように時代を経て特別区の論文の傾向が変化していますが、 これには理由はいくつかあると考えられます。
この理由は「特別区が求める人材像」から把握することができます。
特別区が求める人材像
- 人の思いを理解し、誠実に[聴く]そうして、自分のことのようにまっすぐ向き合う人。
- 向上心を持って、自ら[学ぶ]そうして、自分をみがき、人として成長していく人。
- 想像力、そして創造力豊かに、人々が笑顔になるための方法を[考える]そうして、「私は、こう考えます」とポジティブに表現できる人。
- チャレンジする気持ちを忘れず、周りに働きかけて[行動する]そうして、チームの中で自分の役割を果たしていく人。
特別区の論文はこうした特別区が求める人材像を問うために設定されている問題だと思われます。
特別区では「特別区がが求める人物像にあなたが合致していること」を論文を通して示す必要がある
特別区の人物像は言い換えると、「人の考えを聴き、自ら学ぶ姿勢を持ちながら、自分の考えを適切に発信して、行動できる人材」といえます。
つまり、特別区は「〜すべき」 「〜が望ましい」 と言った評論家ではなく、自分ごととして課題に向き合って実践してに取り組める人材を欲していることがわかります。
そのため、論文では「あなた個人が職員だったら、どのように課題を解決するべきか?」という視点で考えるのがおすすめですね。
これから特別区を受験する人が対策すべき内容
見出し(上) | 特徴 | 問題文に時代背景が記載されている | 課題の要因を述べる必要性 | 職員の取り組を述べる必要 |
---|---|---|---|---|
2002年度〜2003年度 | 抽象的なテーマ | × | × | × |
2004年度〜2008年度 | 課題文に時代背景が述べられるようになった | ◯ | × | × |
2009年度〜2013年度 | 課題の要因を述べる必要がある | ◯ | ◯ | × |
2014年度〜現在 | 職員の取り組みが問われるようになった | ◯ | × | ◯ |
ここまでの傾向を振り返りましょう。
これから特別区を受験する人は「特別区の職員として、どのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい」という問いに対して答える練習をすべきです。
おそらく「特別区の職員として、どのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい」という問いの傾向はしばらく続くと考えるからです。
ここまで特別区論文の出題形式の変遷について見てきました。
次は、現在主流となっている「特別区の職員として、どのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい」
という題形式をさらに深掘りしていきましょう。
特別区論文の課題文の構成
まずは2023年に出題された論文課題を見てみましょう。
2023年度・第1問(事務)
スマートフォン等の情報通信機器の普及に伴い、区民生活のデジタル化が進む中で、行政の情報発信のあり方にも変化が求められています。
特別区においても、デジタル・デバイドの解消を推進する一方で、今後の社会の担い手となる、10代・20代を中心とした若年層について、その情報収集手段や価値観、生活環境を理解した上で情報発信を行う必要があります。 また、行政活動である以上、効果検証や継続性の視点も重要です。
このような状況を踏まえ、若年層に伝わりやすい行政情報の発信について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
特別区では例年上記のような問題が出題されます。
この論題は大きく分けて3つの段落から構成されています。 それぞれの段落を分解すると次のような構成となっています。
- 1段落目:社会の情勢・現状の背景
スマートフォン等の情報通信機器の普及に伴い、 区民生活のデ ジタル化が進む中で、 行政の情報発信のあり方にも変化が求められています。 - 2段落目:特別区に求められていること・課題
特別区においても、デジタル・デバイドの解消を推進する一方で、今後の社会の担い手となる、10代・20代を中心とした若年層について、その情報収集手段や価値観、生活環境を理解した上で情報発信を行う必要があります。 また、行政活動である以上、効果検証や継続性の視点も重要です。 - 3段落目:問題提起
このような状況を踏まえ、若年層に伝わりやすい行政情報の発信について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
この問題文から、結局のところ何を答えればいいのでしょうか?
その答えは最後の「3段落目:問題提起」に現れています。
特別区の論文は最後の段落が課題の趣旨
この形式では、3番目の最後の段落が論述すべき主旨となっています。
この中では、3段落目の問題提起が論旨であり、あなたが必ず解答しなければならないポイントです。
「若年層に伝わりやすい行政情報の発信について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか?」 という問いに論文で答える必要があります。
この問いをしっかりと読み取れずに、1段落目や2段落目について、延々と回答しても得点はできません。
問われているのは3段落目の「特別区の職員としての取り組み」であるため、関係のない部分を書きすぎると問いに応えきれなくなります。
ましてや1500字程度しか書けないため、不要なことを書いていると必要なことが書けません。
結果として、合格点を得られなくなりかねないので注意が必要ですよ。
特別区の論文は、問題文に論じるべき内容のヒントが隠されている
もう1つの例題を出します。
2023年度・第2問(事務)
我が国では、少子化を背景とした人口の減少傾向や、高齢化の更なる進展等による経済社会への影響が懸念されている中で、社会経済活動の維持に向けた新たな人材の確保という課題が生じています。
こうした課題に対して、特別区では少子化対策等の長期的な取組に加え、当面の生産年齢人口の減少に伴う地域活動の担い手不足の解消等の対策が早急に求められています。
このような状況を踏まえ、人口減少下における人材活用について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
そして、この問題文を分解すると以下の通りです。
- 1段落目:社会の情勢・現状の背景
我が国では、少子化を背景とした人口の減少傾向や、高齢化の更なる進展等による経済社会への影響が懸念されている中で、社会経済活動の維持に向けた新たな人材の確保という課題が生じています。 - 2段落目:特別区に求められていること・課題
こうした課題に対して、特別区では少子化対策等の長期的な取組に加え、当面の生産年齢人口の減少に伴う地域活動の担い手不足の解消等の対策が早急に求められています。 - 3段落目:問題提起
このような状況を踏まえ、人口減少下における人材活用について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。
この問題で、3段落目:問題提起の「人口減少下における人材活用について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。」 だけをみてしまうと、述べるべき内容が無限に出てきてしまいます。
人口減少下における人材活用に使えそうな政策アイディアの例
- 人材シェアリングの推進
- 外国人の活用
- 多文化共生の推進
- 特別区職員の育成
- シルバー人材の活用
- 専業主婦の社会進出
- 障害者の活用
- 子育て人材の育成
- 新しい人事制度の導入
- ボランティアの活用
- 地域のつながりの強化
- 産業育成
このように色々なアイディアが生まれてきてどれを書けば良いか悩んでしまいます。
一方、ここで2段落目の特別区に求められていること・課題を見てみると 「当面の生産年齢人口の減少に伴う地域活動の担い手不足の解消等の対策が早急に求められています。」 という記載があります。
このことから、この論文では「地域の担い手不足の解消等」について触れてくださいというヒントが与えられていることがわかります。
そのため、地域社会の強化だったり、地域に存在する高齢者や専業主婦などの人材を活用する方策を書くべき事がわかります。
このような問題文から本文に書くべき内容を盛り込むことで、問題文に対してより的確な答えを導くヒントにもなります。
したがって、「人口減少下における人材活用」について、地域社会の担い手不足を解消することについて書いていればさらに良い論文となります。
(とはいえ、人材活用についてかけていれば合格レベルには達するとは思います。)
特別区の論文で取り扱われるテーマは?
ここまでは特別区の論文形式について解説してきました。
続いては、特別区で出題されるテーマについて網羅的に解説していきますね。
特別区の論文で出題されるテーマは多岐にわたります。
特別区の論文テーマ(事務など)
特別区のテーマはこれまで次のような課題が出題されていますよ。
年度 | 事務 | |
---|---|---|
第1問 | 第2問 | |
2002 | これからの地域社会と公務員の役割 | 都市の再生と快適環境の構造 |
2003 | 安心できる区民生活と行政の役割 | 働き方の多様化とこれからの社会 |
2004 | 多様化する住民ニーズへの対応 | 持続可能な社会の構築 |
2005 | 地域福祉の向上 | 大地震への対策 |
2006 | 少子化時代における特別区の役割 | 安心して暮らせる地域社会の実現 |
2007 | 住民協働の推進 | 環境問題への取組 |
2008 | 基礎自治体として自立した行政運営 | 情報通信ネットワークの活用 |
2009 | 区民が安心して暮らせる地域社会の実現 | 学校と地域社会の関係 |
2010 | 保育園の待機児童解消 | 施設設置に関する社会の合意形成 |
2011 | 大地震に対する安全・安心の確保 | 地域コミュニティの活性化 |
2012 | 自治体のアカウンタビリティー | 人口減少、高齢化社会で暮らしやすい地域の実現 |
2013 | 魅力ある東京の発信 | いじめや体罰に対する地域としての取組 |
2014 | 自転車を安全かつ安心して利用できるまちづくり | 東京のグローバル化 |
2015 | 自治体事務のアウトソーシング | ワークライフバランスの実現 |
2016 | ユニバーサルデザインの視点に立った人に優しいまちづくり | 区民の視点に立ったICTのさらなる利活用 |
2017 | 空き家問題 | 社会における女性の活躍推進 |
2018 | 住民との信頼関係の構築 | 子どもの貧困問題 |
2019 | 外国人の増加に伴い生じる新たな課題 | 認知症高齢者への対応 |
2020 | 先端技術を活用した区民サービスの向上 | 地域の防災力強化 |
2021 | 区民ニーズに即した魅力的な公共施設のあり方 | ゴミの縮減と資源リサイクルの推進 |
2022 | 限られた行政資源による区政運営 | 地域コミュニティの活性化 |
2023 | 若年層に伝わりやすい行政情報の発信 | 人口減少化における人材活用 |
特別区の論文テーマ(保健師)
年度 | 保健師 | |
---|---|---|
第1問 | 第2問 | |
2002 | – | – |
2003 | – | – |
2004 | – | – |
2005 | – | – |
2006 | – | – |
2007 | – | – |
2008 | – | – |
2009 | – | – |
2010 | – | – |
2011 | 高齢者が生き生きと暮らせる社会 | 自殺対策 |
2012 | 被災後の区民の健康推進 | 住民の不安解消 |
2013 | 介護予防の推進 | 感染症対策 |
2014 | スポーツを通じた青少年の心と体の健康づくり | 第結核の拡大防止と適切な医療の支援 |
2015 | 子どもが健やかに成長できる社会の実現 | 区民のメンタルヘルスの維持 |
2016 | 妊娠、出産、子育ての切れ目ない妊婦や保護者支援の仕組み | 区民の生命や安全を守るための取組 |
2017 | ||
2018 | 住民の健康増進 | 被災した住民の健康維持 |
2019 | 風疹の感染拡大の防止 | 地域包括ケアシステムの推進 |
2020 | 子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり | がん患者を含めた区民が安心して暮らせる地域づくり |
2021 | 地域における高齢者の自立した生活の実現 | 依存症対策 |
2022 | 地域・職域連携による効果的・効率的な保健事業の推進 | 家庭や地域における食育の推進 |
2023 | 子どもの健全な育成 | 認知症の予防と共生の推進 |
このように幅広いテーマから出題されていますね。
一見ランダムに出題されているように見えますが、実はその時々の時勢を反映した論文課題になっています。
特別区の論文テーマは時勢を反映している
近年出題されている論文テーマと、直近の出来事を対比して見ました。
年度 | 論文課題 | 時代背景 |
---|---|---|
2023年 | 若年層に伝わりやすい行政情報の発信 | 令和3年 デジタル社会形成基本法 |
人口減少化における人材活用 | 令和3年4月 社会福祉法の改正 (重層的支援体制整備事業) | |
子供の健全な育成 | 平成28年 児童福祉法の改正 (特別区で児童相談所の設置が可能に) | |
認知症の予防と共生の推進 | 令和元年 認知症施策推進大綱の制定 | |
2022年 | 地域コミュニティの活性化 | 平成28年 「ニッポン一億総活躍プラン」 令和29年 「『地域共生社会』の実現に向けて」 |
限られた行政資源による区政運営 | 新型コロナウイルスの流行 | |
保健師 地域・職域連携による効果的・効率的な保健事業の推進 | 地域保健法の改正 | |
家庭や地域における食育の推進 | 令和3年 第4次食育推進基本計画の公表 | |
2021年 | 区民ニーズに即した魅力的な公共施設のあり方 | 財政健全化計画等に関する建議 |
ゴミの縮減と資源リサイクルの推進 | 令和元年 SDGsアクションプラン2020(内閣府) | |
地域における高齢者の自立した生活の実現 | 被災後の区民の健康推進 | |
地域における高齢者の自立した生活の実現 | 平成28年 地域再生法の改正 |
特別区の論文試験では、ある論文が出題されるとき、その少し前に法令の改正や世間的にニュースとなった出来事が存在します。
すなわち、特別区はそのときどきの社会情勢を色濃く反映したテーマを出題しているということです。
このように特別区の論文テーマは時勢を非常に意識して出題していることがわかります。
(そのため、時事の勉強は、特別区論文対策につながります。)
とはいえ、近年は各分野で続々と新法が制定されたり、社会情勢も目まぐるしく変わっているため、 確実に出題されるテーマを当てるのは正直難しいところです。
一方で、過去の出題テーマを振り返ってみると、特別区の論文で出題されにくいテーマがあることがわかります。
特別区論文のテーマの出題傾向と予測
続いては、特別区の論文で出題されるテーマの傾向と予測を解説していきます。
過去出題分のテーマをもとにいくつかの法則性を紹介します。
(とはいえ、ここで紹介しているものが100%正しいとは限りませんので、あくまで参考としてください。)
特別区論文は23区全体に当てはまるテーマが出題されやすい 特別区の論文で出題されるテーマは23区が共通で抱える課題が出題される傾向にあります。
例えば、
- 地域コミュニティの希薄化
- 災害対策(首都直下型地震の発生に備えて)
- 行財政の効率化
裏を返せば、特定の区にしか該当しないようなテーマはあまり出題されません。
特別区に該当しないテーマは出題されない
特別区に該当しないテーマは出題されにくいです。
具体例として、以下のものが挙げられます。
- 地方創生 →特別区は首都圏であり、地方創生の対象には当たらない。
地方創生とは?
「地方創生とは、少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくことを目指すものです。」引用:内閣府 地方創生は特別区には当てはまりません。
地方創生は、東京都の一極集中を是正するための取り組みだからです。
(もしかしたら 「地方創生のために特別区がどのようにかかわっていくべきか?」というテーマであれば、出題可能性はあります。
とはいえ、それでも出題確率は低いと思われます。)
特定の区しか当てはまらないテーマは出題されにくい
特別区は採用時に特別区人事・厚生事務組合で合否を決定し、最後に各区で採用されます。
つまり、特別区の論文問題は23区の代表である特別区人事・厚生事務組合が出題しています。
そのため、特定の区に偏ったテーマは出題されにくいです。
- 農業振興 →農地が存在しない区が存在する
- 水産業振興 →海岸に面していない区が多数存在する
こういったテーマは特定の区に不公平であるため、出題されにくいです。
例えば、農業振興であれば練馬区は畑などの耕地面積が23区で最も広いですが、港区などの都心部では、畑はほとんどありません。
港区「うちは畑とかないのに農業振興のテーマ出されても困るんですが、、、」
仮に出題されるとすれば
- 農業振興・水産業振興→緑地化の推進等の環境問題など
このように、もう少し広いテーマで出される可能性が高いです。
区の職員が関与できない分野はあまり出題されない
- 学校教育
→学校のカリキュラムの制定等、制作に関わる部分は教育委員会や校長先生が主導しているため、区長部局に所属している区の職員が関与できる業務が少ない - 就労支援
→就労支援は都道府県等の広域自治体が担う業務。
見落とされがちですが、「特別区の職員としての取り組み」を述べるテーマの場合、これらは出題されにくいでしょう。
特別区の職員が関与できる権限が少ないため、有効な取り組みを述べられないからです。
(ただし、2013年度以前の出題形式であれば、一部テーマとして出題されたことはありました。)
政治的なテーマは出題されにくい
- 都区財政調整制度
→「特別区 vs 東京都」という政治的な対立構図が存在する - ふるさと納税制度
→「特別区+東京都 vs 総務省」という政治的な対立構図が存在する
都区財政調整制度
特別区はその成り立ちの歴史から、東京都に多くの権限が残されたままです。
その1つが特殊な税制であり、都区財政調整制度が代表例です。
都区財政調整制度とは、本来市町村がもらえるはずの税源の一部を都が一旦預かり、それらを都と特別区で再分配するというもの。
法人住民税や固定資産税など額の大きい重要な財源がとに半分持って行かれているわけですから、特別区では反発が多い分野です。
ふるさと納税制度
特別区は「不合理な税制改正」として言語道断しています。
(東京都に至っては全国の自治体で唯一、意図的にふるさと納税に参加していません。
これはふるさと納税に参加しないことで、制度自体に反対することを態度で示しています。)
特別区は、都区財政調整制度やふるさと納税制度に反対ですが、国や都の政策課題を受験生を巻き込んで大ぴらに批判するようなことはなかなかしにくいような気もします。
例えば、特別区のふるさと納税制度について論じさせることで、
なんて、回答をする受験生がいてもおかしくありません。
(現に、東京都はそういう姿勢をとっていますし。)
こういった回答を採点して正解とすることは、ある意味国に喧嘩を売ることになっていろいろ不都合が生じかねないです。
そのため、こういった政治的な分野は出題があまりされにくい分野といえるでしょう。
外から見れば、国だろうが都だろうが、「公務員は公務員」と一括りにされがちですが、 公務員も一枚岩ではありません。 実はいろいろな場面で対立の多い組織です。
【補足】特別区論文noteではマイナーテーマについても取り扱っています
これらは非常に出題されにくい分野ですが、特別区合格対策noteでいくつか掲載しています。
特別区の論文を徹底的に対策したい人はぜひ。
特別区論文の構成方法
次は、特別区論文の具体的な解答法や学習法について解説します。
特別区論文の答案の書き方の構成例
論文の書き方にはいろいろな型があります。
「特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。」といった近年出題されているタイプの特別区論文の場合、段落構成は概ね次の流れで論文を書いていきましょう。
特別区の論文は
- 1段落目(序論):現状の把握
- 2段落目(本論):特別区の職員の取組
- 3段落目(結論):まとめ
の3点に分けて書くのがおすすめ。
ここでは、「特別区の災害対策を推進するために、特別区の職員はどのように取り組むべきか?」 という仮のテーマを例にとって大まかな流れを解説してみますね。
- 序論:特別区の災害対策の現状
- 本論:特別区の職員が取り組むべきこと
- 結論:序論と本論のまとめ
特別区論文の解答構成例(特別区の災害対策)
(序論)
特別区は今後数十年以内に首都直下型地震の発生が見込まれていることから、災害対策は喫緊の課題である。災害対策を行うため、特別区の職員の取組を述べる。
(本論)
第1に、区民の防災意識を啓発する。 特に、若年層は災害意識が低い。 そのため、若者に対する周知を行う。 そこで、特別区の職員は若者をターゲットとした情報発信に取り組む。 具体的には、SNSを活用した周知を行う。
第2に〜(以下、取り組み内容を述べる)
(結論)
上記によって、区民の災害意識を高める。 特別区の職員は区民の安全を守るため、災害対策に全力を尽くす。 一例ですが、全体像をものすごくざっくりとまとめると上記のような流れとなります。 続いて序論・本論・結論の各部を詳しく見ていきましょう。
特別区論文の序論の書き方
1番最初の段落は序論です。
序論は論文のテーマに対する課題を提起する役割をもっています。
この段落では「なぜそのテーマや取組が重要であるのか?」を具体的に述べていきます。
そのため、特別区を取り巻く社会や国の状況、特別区が置かれている現状について述べましょう。
(現状)
特別区は今後30年以内に70%の確率で首都直下型地震の発生が見込まれている。
(現状を放置すると生じうる出来事)
災害に対する備えが不十分であると、被害の拡大や二次災害をの発生などにより多くの区民が危険にさらされるため、事前の対策が重要である。
(特別区に求められていること)
そのため、特別区は災害に強い街づくりを実現し、区民の安全を守ることが求められている。
(課題提起)
こうした中で、特別区の災害対策を推進するために区の職員が担うべき役割を2点示す。
この段落では、採点者に対して、特別区の課題をいかに解像度高く認識・理解しているかを示すことがポイントです。
特別区の論文で高評価を得られる書き方の一例
- 現状をより具体的に数値で表す
→ex.特別区の人口は2035年まで増加傾向にある →今後30年以内に70%の確率で首都直下型地震の発生が見込まれている。 - 現状を放置すると起こりうる将来の危機を表す
→ex.このままの状態が継続すれば、持続可能な行政活動が維持できなくなる →ex.高度経済成長期に建築された木造住宅の密集地帯(木密地域)は火災延焼の原因となる - 現状に至るまでの経緯
→ex.2000年をピークに減少傾向にある →ex.東京都の木密地域不燃化10年プロジェクトにより、近年、都内の木造住宅数は減少傾向にあるが、一部の地域では木蜜地域がいまだ現存している。
特別区論文で序論を書く際のポイントとしては、この段落では上記のようなことを記述すると高評価につながります。
特別区論文の本論の書き方
序論の課題提起を受けて、本論で特別区の職員の取り組みについて記述します。
この段落が、論文の中核となる最も重要な箇所で、得点に大きく影響します。
その反面、受験生によって最も大きく差がつく部分なのでしっかりと対策することで、高得点を狙えます。
この段落では、特別区の職員としての取組を論じる段落です。
一例として、論述する順番を述べると次のような流れになります。
主張→課題→解決策→取組→具体例→効果
こういった順番で論理立てて述べることができれば、合格点を得ることができます。
先ほどの例に当てはめると次のようになります。
(主張)第1に、区民の防災意識を啓発する。
(課題)特に、若年層は災害に対する意識が低い。
(解決策)そのため、若者に対する周知が求められる。
(取組)そこで、特別区の職員は若者をターゲットとした情報発信に取り組む。
(具体例)具体的には、SNSを活用した周知を行う。
ちなみに、各テーマにおける模範解答例は特別区小論文の模範解答集に記載していますよ。
特別区論文の結論の書き方
小論文の結論の役割は序論・本路の受け、論文で主張したい内容を結論づけることです。 『結局、論文で何を主張したいのか?』という問いに答えるのが役目です。
最後には、特別区職員として、取り組むべき内容を再度繰り返し主張して締めくくりましょう。
(序論と本論の総括)
以上のとおり、区民の防災意識を高めるため、特別区の職員が取り組むべきことを3点挙げた。
(抱負)
特別区の職員は区民の安全を守るため、災害対策に全力を尽くす。
小論文の結論の書き始めフレーズ
結論部分の書き初めには、序論・本論で述べてきた述べてきた内容を受ける接続詞を使用するのがおすすめです。
具体的には以下のフレーズを使いましょう。
- 「以上のとおり〜」
- 「よって〜」
- 「これらのことから」
- 「上記により」
特にこのフレーズでなければいけないというものはありません。
これらの論文の模範解答はnoteで紹介していますよ。
もっと詳しくいろいろな解答を知りたい方はぜひnoteをご覧ください。
特別区論文の解答時の注意点
- 区の政策を批判することを書いてはいけない
- 特別区の職員ができないことを書いてはいけない
- 多額の費用を要する政策はあまり書かない方が望ましい
続いて、特別区論文の解答で書いてはいけない注意ポイントをご紹介します。
ここはかなり重要なパートです。
区の政策を批判することを書いてはいけない
区の政策を批判することを書かないようにしましょう。
シンプルに採点官である特別区職員の反感を買ってマイナスな印象を与えるからです。
特別区の政策は、各区の職員の中でも優秀な人たちが、時には外部の専門家等を交えて、時には多くの利害関係者の意見を調整し、話し合いに話し合いを重ねてやっと決めたものです。
そうして苦労の末にでき上がった政策を、区の職員ではない人に一方的に批判されたら、区の職員である採点官はやっぱり良い気持ちはしないものです。
例えば
「現在〇〇区が行っている政策のに加えて、△△という取り組みを行うことで、より効果を発揮できるようになる」
といったように、批判を交えずに前向きな書き方をしましょう。
具体的な書き方のフレーズは、特別区の模範解答論文テーマで紹介しています。
特別区の職員ができないことを書いてはいけない
特別区職員の権限にないことを、職員の取り組みとして書いてはいけません。
代表的な例は、「法律の制定改廃」です。
法律は国会で制定されるため、区では制定できません。
多額の費用を要する政策はあまり書かない方が望ましい
多額の費用がかかる政策を書かないほうが望ましい理由は、論理性や発想力を採点できなくなるからです。
特別区の子育て政策を推進するために、次のように取り組みます。
- 子育てを行う親に補助金を配ります。
- 共働きを促進するため、保育園に補助金を配ります。
- 子供の養育環境を整備するため、児童館に補助金を配ります。
こんな論文を書いたとしたら、受験生の考えや発想が見えないため、 論理性や発想力を採点できません。
【補足】論文で見ているのは受験生の資質
あくまで論文は、問題の解決策そのものを求めているのではなく、 論文の解答を通して、その受験生の適性や資質を図るものです。
お金頼りな政策は、受験生の資質が見えないことから論文の点数が低くなりがちです。
採点者は各区の管理職級が行う
また、採点官の心情的にもあまりよろしくありません。
論文の採点は基本的に各区の管理職級が採点をするからです。
区長や管理職クラスの職員が検討を重ねて、議会の議決を経て、練りに練って決定するものです。
そのため、採点官を務める管理職からすると
- 費用対効果は確かなのか?
- 費用がかからない別の方法があるのではないか?
- 財源はどこから捻出するのか?
と疑問を抱いてしまいます。
こうした実現可能性の低さから、マイナスの印象を持たれる可能性もあります。
ただし、お金がかかる政策は書いても良い場合がある
注意点としては、絶対にお金のかかる政策は絶対に書いてはいけないというわけではないこと。
例えば、建物の強靭化による防災、建物のバリアフリー化などは、それぞれの政策を進める上で欠かせない論点です。
ただし、こうしたお金のかかる政策は主題として記述するとしても1つには収めたいものです。
補助金を配る政策には注意が必要
一方で、注意したいのが「補助金を配る」という政策です。
これは建物の建て替えなどと異なり、単にお金をばら撒くだけの政策に終始しがちです。
そのため、もし補助金を配るような記述を行う場合は、できる限り自分なりのアイディアを交えることが重要です。
自分の考えを織り込むことによって発想力をアピールできます。
特別区の論文で好まれる政策
- ハード面よりソフト面の解決策が好まれる
- 特別区の論文で「連携・協働」を書くのはおすすめ
反対に、特別区の論文で好まれる政策を解説します。
ハード面よりソフト面の解決策が好まれる
一方で、特別区の論文で好まれるのはソフト面の政策です。
ハード面の政策
- 補助金を配る
- 建物を作る
- 条例・規則・許認可の制定改廃等
ソフト面の政策
- 区民や関連団体との協働や連携
- 職員の育成
- 意識啓発による行動様式の変更
一方で、ソフト面の取り組みとして「広報や周知」は取組内容が一辺倒(区報・区のホームページ・SNS発信)になりやすいです。
そのため、あなたの考えを加えた上で記述するのがおすすめです。
特別区の論文で「連携・協働」を書くのはおすすめ
特別区の論文では、関係者との「連携・協働」について書くのがおすすめです。
区の政策としてもさまざまな取り組みが行われているため、バリエーションも豊富です。
論文であなたの考えを盛り込む際にも創意工夫の幅が広く、高評価を得やすいですよ。
ソフト面の政策は、比較的お金をかけずに取り組めるものも多く、実行可能性が高いことから採点官にも好まれやすいです。
また、ソフト面の取り組みであれば、権限のない下働きの職員でも取り組めるものが多くあります。
採点官を務める管理職急の職員からも好印象を持ってもらいやすいです。
やはり「特別区の職員として」の取組を述べることを求められていることからすると、実行可能性の高いことを提案してくれる職員が求められているでしょう。
特別区の論文で高得点を得るポイント
続いて、特別区の論文で高得点を取るためのポイントをご紹介します。
そのポイントとは次の3つです。
- 客観的に
- 簡潔にわかりやすく
- 具体的に
順番に解説していきます。
ポイント①:論文は客観的に書くこと
論文は客観的に書く必要があります。
「男性の育児休業の取得率は女性よりも高い。」
これは事実に反しています。
厚生労働省によると、令和3年度における女性の育休取得率は85.1%であり、男性の育児休業取得率は13.97%だからです。
正式なデータを見なくても、直観的に間違っているというのは気づくと思います。
多くの受験生はこうした誤りを犯すことはあまりありません。
論文を書くときは因果関係に注意しよう
一方で、次のような誤りは多くの人がしがちです。
「少子高齢化が引き起こす労働力人口の減少や経済停滞により、共働き世帯は増加傾向にある。」
一見それっぽい文章です。
しかし、これは正しいとは言えません。
なぜならば、経済停滞によって働き口が減って共働きが減るという説があるからです。
(反対に、経済が好調なときのほうが、女性の働き口が多くなって共働世帯が増えるということもあり得ます。)
もし上記のような論理展開をする場合、断定をしてはいけません。
「近年、我が国の共働き世帯は増加傾向にある。
これは、我が国の世帯年収が減少傾向にあることから、家計を支えるために共働きをする家庭が増加したことが一因として考えられる。」
このくらいにとどめておいた方が良いです。
あなたの意見を述べるときは、それが本当に正しいものなのか、論理関係をしっかり見ながら論じましょう。
客観性を担保するため特別区の論文は複数人で採点している
論文は基本的に複数人で採点します。
客観性を担保するため、複数人で採点するのが基本です。
論文は算数のように、1+1=2という絶対解はありません。
採点官によって、合格ライン・不合格ラインとなる判断にもブレが存在します。
そのため、特定の人にだけウケるような尖った論文を書かないようにしましょう。
ポイント②:文章は短く書くこと
- 文法上の誤りを併発しにくい
- 文意が伝わりやすくなる
- 文法上の誤りを併発しやすい
- 文意が伝わりにくい
短い文章と長い文章はそれぞれ次のような特徴があります。
解説していきますね。
長い文章は文法上の誤りを併発しやすい
長すぎる文章がよくない最大の理由は文法の誤りを併発しやすいことです。
文法の誤りは減点につながります。
そして、減点は不合格につながります。
つまり、不用意に長すぎる文章を書くことは、不合格につながる非常に危険な書き方です。
長文で文法上の誤りがある文章とは、例えば次のようなものです。
「日本の経済成長は、戦後に悪化の一途を辿っていたが、高度経済成長期にさまざまな政策を実施したことにより、 急激な変化を遂げることで世界第2位の大国になったが、 バブルの崩壊後から生じた「失われた30年」と呼ばれる経済状況の悪化に対する打開策を探している。」
上記の文章では、 「主語=日本の経済成長」であるが、「述語=打開策を探している」となっているため、文法的に誤りです。
(「日本の経済成長が打開策を探している」という文章はおかしいです。)
打開策を探しているのは「政治家」や「国民」などの人が主語となるため、意味が通じなくなってしまいます。
正しく直すと次のような文章となります。
日本の経済成長は、戦後に悪化の一途を辿っていたが、高度経済成長期にさまざまな政策を実施した。
これにより、日本は急激な変化を遂げることで世界第2位の大国になった。
そして、国民はバブルの崩壊後から生じた「失われた30年」と呼ばれる経済状況の悪化に対する打開策を探している。
誤りを防ぐためにも、文章は長く書きすぎないほうが良いです。
長い文章は文意が伝わりにくい
長い文章は、仮に文法的に正しく書いたとしても、文意がわかりにくいです。
文法的に正しいけれども、長くて読みにくい文章は、代表例として法律が挙げられます。
例えば、以下は消費者法の一文です。
消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの分量、 回数又は期間が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
引用:消費者法第4条4項
この文章は、わかりにくいですが、文法的には正しい文章で書かれています。
上記から、主語と述語を抜き出すと、
- 主語=消費者は
- 述語=取り消すことができる
となり、合わせると「消費者は取り消すことができる。」 と、意味が通った文章です。
しかし、修飾語である
「事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの分量、 回数又は期間が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、」
という文言が加わることによって、非常にわかりにくくなっています。
誤った表現 | 正しい表現 |
---|---|
やっぱり | やはり |
もっと | さらに |
やっと | ようやく |
ちゃんと | 正しく |
いつも | 常に |
どうして | なぜ |
どんな | どのような |
こっち/そっち/あっち | こちら/そちら/あちら |
〜けど、 | 〜が、 |
〜から | 〜ため |
ちゃんと | 正しく |
いつも | 常に |
こうした採点官が読みにくい文章を書くのはネガティブな印象にもつながるため、避けた方が無難です。
ポイント③:論文は具体的に書く
論文は具体的に書きましょう。
具体的に書いた論文は説得力がありわかりやすいです。
反面、抽象的な文書はどこか説得力に欠けていて、つかみどころのない文章になりがちです。
「特別区の災害対策」をテーマとして悪い例を1つ挙げてみます。
【悪い例】内容が抽象的な論文
テーマ:特別区の災害対策
第1に、区民の防災意識を啓発する。
防災意識が低いと、災害の備えに対する意識が希薄化しやすい。
そのため、区民の防災意識を高めてもらい、災害に備えてもらう必要がある。
そこで、特別区の職員は防災に関する周知を行い、区民の意識を高める取組を行う。
これにより、防災意識の高い区民が増えることで、災害時の被害を抑えることにつながる。
なんとなくそれっぽいことを書いていますが、中身が全くありません。
この文では、
- 何が課題となっているか?
- 何に取り組むべきか?
これらの具体的な論述が全くなされていないからです。
客観的な論拠もないため、どちらかと言えば「作文」に近いです。
これは、結局のところ論文が書けているようで全く書けていないのと同じです。
(対策していないテーマにぶっつけ本番で対応するとこんな解答例が出来上がりやすいです)
【良い例】内容が具体的な論文
テーマ:特別区の災害対策
第1に、区民の防災意識を啓発する。平成28年度の防災白書によると、特に若年層は防災意識が低く、防災への取り組みが少ない傾向にあることがわかる。そこで、特別区の職員は若者をターゲットとした情報発信に取り組む。 具体的には、若年層が頻繁の利用するLINEやTwitter等のSNSを活用した周知を行う。
この文であげられている具体的な取り組み例は以下の通り。
- 防災において若年層が特に課題であることを客観的なデータに基づいて述べている
- 若年層が頻繁に利用するLINEやTwitterを用いることで、若年層に防災情報をリーチする
文章の中にこのような具体例を交えることで、より説得力のある文章を作ることができます。
(とはいえ、これでもまだ不十分な点もありますが、、、)
具体例を交えた文章を書くことで思考力をを採点官にアピールできるようになります。
次に、特別区の論文で減点されないためのポイントをお伝えします。
特別区論文の注意点
特別区論文で最も注意すべき点は、形式上のミスを減らすことです。
ある論文採点官とのお話
論文で形式上のミスをしないことが重要である理由を私の体験談を交えてご紹介します。
私はかつて勤めていた役所で、採点官とこんな話をしたことがあります。
一応内容にも目を通すけど、文字数が足りなかったり、問いに答えていなかったりするから不合格点をつけて採点を終えるね。
でも、ある程度勉強してきている人が書く論文はどれもある程度の出来なので、内容面だけで言えば甲乙つけ難い部分もある。
特に、試験問題のようなテーマが限定された論文だと、書く内容も人によって大きく変わらないから、採点するのが結構大変なんだよね。
その時に最もわかりやすいのが、形式上のミス。
- 誤字脱字
- 文字数のオーバー
- 原稿用紙の使い方
これは誰が見ても明らかに気づけるのでここを一番最初に見てるね。
あとは、読みにくい文字で書いていると、少しマイナスな印象かな〜。
採点する方も目が疲れるからね。
この話から分かるように、原稿用紙の使い方や誤字脱字など、形式上のミスは不合格に直結します。
最低限ここはクリアしましょう。
特別区の論文の形式上の注意点
- 特別区の小論文は縦書き?横書き?
- 特別区論文の英語の全角・半角の書き分け方
- 特別区論文の数字の書き方
- 論文の書き出しは1マス空ける
- 論文で話し言葉を使わないこと
順番に解説していきますね。
特別区の小論文は縦書き?横書き?
特別区の小論文は横書きです。
この傾向は過去20年以上かわっていません。
今後もかわる事はないと見込まれるので練習では必ず横書きで問題を解く癖をつけましょう。
特別区論文の英語の全角・半角の書き分け方
(引用:「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」鈴木鋭智)
- 数字・小文字のアルファベットは半角で1マスに2文字書く
具体例:2010年 20% - 一般化された英語の略語は全角で1マスに1文字書く
具体例:WHO LGBTなど
通常の英単語や数字は半角で1マスに2文字を書きます。
ただし、単語のイニシャルをとって作られた一般化されたWHOやNPOなどの略語は全角で表記します。
特別区論文の数字の書き方
(引用:教えたがりダッシュ)
数字には、英数字(例:1,2,3)と漢数字(例:一、二、三)がありますが、 論文において、横書きの場合は英数字を使うこととされています。
特別区の論文では、原稿用紙を横書きで記述するため、必ず英数字を使って記述しましょう。
特別区の論文で数字2桁は1マス内に書く
特別区の小論文で2桁の数字を書く場合、1マスの中に2つの数字を入れます。
特別区の論文で数字3桁は2マス内に書く
特別区の論文で3桁の数字を書く場合、1マス目に2文字、2マス目の左側に1文字を記入します。
論文の書き出しは1マス空ける
特別区の小論文では最初を1マス空けてください。(これを「字下げ」と呼びます。)
字下げをして段落を作ることで、採点者が意味のまとまりを把握しやすくなります。
論文で話し言葉を使わないこと
小論文の言葉遣いで注意したいのが「話し言葉」です。
話し言葉は「口語体」といい、歴史と共に書き言葉(文語)が話すための言語として変容したものです。
そのため、文章を書く際に使用すると誤りとなります。
話し言葉の一例
誤った表現 | 正しい表現 |
---|---|
やっぱり | やはり |
もっと | さらに |
やっと | ようやく |
ちゃんと | 正しく |
いつも | 常に |
どうして | なぜ |
どんな | どのような |
こっち/そっち/あっち | こちら/そちら/あちら |
〜けど、 | 〜が、 |
〜から | 〜ため |
ちゃんと | 正しく |
いつも | 常に |
【補足】言葉遣いは時代として少しずつ変化していく
前提として、言葉は時代と共に移り変わっており、数十年単位で見たら正解が変わることもあります。
しかし、数年単位で変わるものではありません。
最後に、特別区論文で合格点を取るために必要な具体的なアクションプランを解説します。
特別区論文の学習ポイント
続いては、特別区論文の学習ポイントを解説します。
前述したとおり、特別区で出題されるテーマは多岐にわたります。
それぞれの課題に対する解決策のストックを網羅的に備えておく必要があります。
もしあなたが「災害対策」のテーマしか用意していなければ、 本番で災害対策が出題されなければ、おしまいです。
特別区の論文の制限時間80分しかありません。
近年の特別区論文はテーマがマニアックは人気が高く、ぶっつけ本番で政策を考えられるほど、 甘い試験ではありません。
そのため、事前に論文テーマを網羅的に備えておく必要があります。
政策をできるだけ暗記する 使える政策が多ければ多いほど、本番で役立ちます。
そのためには、
- 模範解答をひたすら覚えていること
- 演習を通して得た自分なりの考えを引っ張り出すこと
これらを行う必要があります。
特別区論文のおすすめの学習法
特別区の論文で合格点を取るコツで最も重要なのは「インプットの量を増やすこと」です。
論文を読みこんで、論理展開のパターンや政策の知識を蓄えることで合格点に近い論文が書けるようになります。
もちろん、アウトプットで試験の形式になれることも重要ですが、インプットがない状態からアウトプットは生まれません。
しかも、アウトプットの仕方は3回も練習すればすぐに慣れる事ができます。
そのため、できる限り多くの論文テーマに触れて知識量を増やす事が先決です。
特別区論文のアウトプット方法
まずは論文のアウトプットの方法についていくつか紹介しますね。
まずは自分で過去問を解いてみる 過去問に触れて自分で問題を解いてみましょう。
- どこでつまづくか?
- 苦手なテーマは何か?
- 足りない知識は何か?
こういったことに気づくことができますよ。
さらに、いかに自分が準備不足であるか?ということにも気づく人もいるかもしれません。
こうした作業を通して不足した部分の知識を補強していきましょう。
問題を解くのにどのくらいの時間がかかるのかを把握する
論文は時間を測って解いてみましょう。
おそらく最初のうちは時間内で書ききれなかったり、何を書けばいいかわからないことでしょう。
しかし、何回も解いていくうちに徐々に書けるようになりますよ。
最初は時間がかかっても良いから完璧なものを仕上げる 時間をかけても構わないので、政策を調べながら自分なりに完璧な論文を仕上げましょう。
これを何度も繰り返していくうちに、徐々に論文のストックが溜まっていきます。
これを活用して論文の知識を蓄えましょう。
そういった方には後述する学習教材の活用がおすすめ。
【補足】特別区論文の過去問はどこで入手できる?
- 国立国会図書館
- 特別区区政会館
- 過去問を紹介したWebサイト
順番に紹介しますね。
国立国会図書館
国立国会図書館には、特別区に限らず全国で実施された公務員試験の過去問が眠っています。
誰でも過去問を見ることができますよ。
特別区区政会館
特別区の区政会館にも特別区論文の過去問が保管されています。
1枚10円でコピーを取ることもできます。
しかし、国立国会図書館や特別区区政会館は東京都などの首都圏にしか存在しないため、地方在住の方にはあまりおすすめできません。
また、これらはいずれも解答や解説などはついていません。
そんな方のために、以下のページで特別区の過去論文テーマについては無料で公開しています。
【補足】特別区の論文過去問はこちらで詳しく紹介
(特別区の過去問題の推移)
このページで特別区の過去問を掲載しています。
過去問について知りたい人はこちらをご覧ください。
【補足】論文を解く際のコツ
プロット構成に出来るだけ多くの時間を割く
プロット構成とは、論文を書き始める前に、どのような骨組みで論を進めていくか、いわば設計図を決めるものです。
仕事は下準備が大切ですが、論文も同じでプロットがしっかりしていれば、あとは構成に沿って文字を書くだけの作業です。
この部分をしっかりと書くことで、その後の論述がかなりスムーズにいきます。
反対に、プロットを書かないで、行き当たりばったりで記述すると、様々な不具合が起きます。
- 文字数が足りない
- 時間が足りない
- 論理に矛盾が生じる
デメリットは数え切れません。 そのため、練習を通してプロットの構成にかける時間配分を考えましょう。
(ただ、今振り返ってみると25分はちょっとかけ過ぎな気もしますね、、、)
試験開始15分も過ぎるとほぼ全ての人が論文を書き出します。
そんな中で、プロット構成を考えてると「カリカリ」と論文を書きすすめる鉛筆の音が鮮明に聞こえていきます。
そうした状況でも焦らず落ち着いてプロット構成に時間をかけるのがおすすめです。
論文のプロット構成に時間をかけたほうが良い論文を書けることを、練習を通して実感していたので、焦る心を頑張って落ち着けていましたね。
構成にどのくらいの時間をかけるかは人それぞれですが、あなたの最適な時間を見つけてみましょう。
プロット構成には特に模範解答の模写が役立ちますよ。
予備校の模試を受けてみる 予備校の模試を受験するのもおすすめです。
予備校の模試は論文課題を解けるだけでなく、採点や順位づけまで行ってくれるため、客観的に実力を把握することができます。
論文の添削を受けてみる ある程度学習した受験生でも躓くのが、「論理性」の部分です。
説得力ある政策の知識を持っていても、 課題→取組→政策の具体例 という流れの中で、課題と取り組みの間の論理が飛躍しているケースは少なくありません。
ここが多少欠けていても、不合格にはなりませんが、満点を狙うのは難しいです。
また、こうした誤りは自分一人ではなかなか気付けないもの。
そこでおすすめなのが、プロの論文添削を受けることです。
【おすすめ】公務員論文添削の方法
- 公務員予備校の論文講座を受講する
- 【おすすめ】ココナラで論文添削を依頼する
おすすめの公務員論文の添削の方法は上記のとおり。
公務員予備校の論文講座を受講する
1つ目の方法は、公務員予備校の論文講座を受講することです。
各公務員予備校は試験直前期に特別区専用の対策講座を実施しています。
その中でも、一部の公務員予備校では、添削付きの少人数制の特別講座を実施しています。
ただし、
- 申込みできる人数に制限があり、受講できない可能性がある
- 費用が数万円と高額である
こういったデメリットがある点に注意が必要です。
【おすすめ】ココナラで論文添削を依頼する
個人的に最もおすすめの方法がココナラで論文添削を依頼する方法です。
ココナラには、非常に多くの添削講師が在籍しており、現役の公務員予備校講師や元人事課で採用活動を行っていた職員もいます。
その上、平均相場は1,000円~5000円ほどと、公務員予備校の数分の1以下の費用で安く受講できます。
以下のリンクから講師を探すことができるので、論文添削を考えている方は是非ご覧ください。
特別区論文は過去問10年分ほど演習するのがおすすめ
特別区の論文は過去10年分ほどを対策するのがおすすめ。
過去論文を解くことで、近年の出題テーマの傾向をつかむことができます。
近年の出題傾向は「特別区の職員としてどのように取り組むべきか?」と問うものしかありません。
そのため、過去問の演習を通して解答法を練習しておくことで、本番でもスムーズに解答できるようになります。
似た問題が出題されることがある
ICT技術に関するテーマ
- 2008年:情報通信ネットワークの活用
- 2016年:区民の視点に立ったICTのさらなる利活用
- 2023年:若年層に伝わりやすい行政情報の発信
災害対策
- 2011年:大震災に対する安全・安心の確保
- 2020年:地域の防災力強化
環境問題に関するテーマ
- 2007年(事務):環境問題への取組
- 2021年(事務):ゴミの縮減と資源リサイクルの推進
地域社会
- 2009年:(事務)区民が安心して暮らせる地域社会の実現
- 2006年(事務):安心して暮らせる地域社会の実現
- 2023年:人口減少化における人材活用
- 2022年:地域コミュニティの活性化
- 2012年:人口減少、高齢化社会における暮らしやすい地域の実現
- 2005年(事務):地域福祉の向上
住民協働
- 2007年:住民協働の推進
- 2018年:住民との信頼関係の構築
このようにテーマが重複する問題がいくつか出題されています。
そのため、10年分ほど過去問を演習すれば、本番でいずれかの問題が出題される可能性が高いです。
特別区論文のインプットでおすすめの方法 区の政策について知識を深める 区の政策を調べる事で論文にかける内容が増えます。
区の政策は正しく「特別区の職員としての取り組み」が記載されているからです。
区の政策を知ることによって記述できる内容は増えていきます。
特別区の政策を調べる方法
- 各区のホームページ
→各区の政策を調べることができる - 特別区長会調査研究機構のホームページ
→特別区が抱えるテーマについて研究結果が掲載されている - 東京都庁のホームページ
→区の政策に関連する取組が掲載されている - 各省庁のホームページ
→国の方向性が特別区の政策の土台を形成しいる - 他市区町村のホームページ
→他市町村の取組には区の政策に生かせるものもある - 特別区協議会のホームページ
→特別区制度や沿革、23区全体のホームページを横断検索できる - 各研究機関のホームページ
→政策課題について研究している機関は多く存在する - 特別区職員ハンドブック
→特別区の沿革や各区の状況を詳しく知ることができる - 特別区区政会館
→会館内に、政策資料を収納した資料室がある - 各区役所や地域センターの窓口
→役所のパンフレットや職員の生の声を聞ける
特別区の政策を調べるには上記が参考になります。
こういった媒体から情報を集めることで、論文知識に活かすことができますね。
そして最もおすすめなのが模範解答を読み込むなどです。
【おすすめ】模範解答を読み込む
模範解答の読み込みが最もコスパの良い学習方法です。
- 客観的な知識を身につける事ができる
- 政策の知識を身につけることができる
- 特別区の論文作成に役立つキーワードを覚える事ができる
模範解答によって得られるものは多いからです。
客観的な知識を身につける事ができる
模範解答では、論文の客観的なデータを学ぶ事ができます。
区の課題を学ぶ事ができる 論文では、区の置かれている現状や課題を学ぶことができます。
課題の根拠となっている具体例も記載してあることから、より明確に課題を認識できるようになります。
課題認識力などの論文採点項目の評定をアップさせる事ができます。
政策の知識を身につけることができる
特別区の論文の特徴として、実際に行われている政策を述べることが効果的です。
政策を述べることで論文の説得力を向上させるからです。 模範解答にはそういった政策の実例を述べているものが多く、論文に混ぜることで得点アップにつながります。
特別区の論文作成に役立つキーワードを覚える事ができる
- 接続詞の使い方
- 単語の使い方
- 公務員論文で特有の単語の習得
→具体例:ネウラボ、サーキュラーエコノミーなど)
模範解答に使われている言い回しは試験本番でもそのまま活用できます。
特別区の論文でおすすめの学習教材
特別区の論文でおすすめは模範解答を読み込むことです。
学習教材は多くありませんが、以下のようなものが挙げられます。
- 市販の書籍
- 公務員予備校の模範解答
- 特別区論文の模範解答note
順番に解説していきますね。
特別区論文の教材①:市販の書籍
- 費用を安く抑えることができる
- 特別区の論文をピンポイントで対策できる書籍はない
真っ先に思いつくのが市販の教材です。
ただし、教養論文の模範解答を抑えている書籍はほとんど市販されていません。
数少ないおすすめの書籍をあげると、例えば、寺本康之の小論文バイブルもおすすめの本ではあります。
書籍であれば2,000円~3,000円ほどかかりますが、費用を抑えて模範回答を入手できるというメリットがあります。
しかし、致命的なデメリットは、書籍の内容は国・都道府県・市町村などに満遍なく活用できるように書かれたものであるという点です。
つまり、特別区に特化していたり、職員の取り組みにまで言及して特化した内容ではありません。
近年の特別区の問題はかなりマニアック
近年の特別区の問題はかなりマニアックなものも多いです。
特別区は時制に乗った問題を出題するため、時代の流れの早い現代においては、新しいテーマの論文がどんどんと出題されます。
2023年は「若年層に向けた情報発信」といったこれまでに見られなかった問題が出題されています。
過去問では決して出題されなかったような、マニアックな知識を問われるものが増えているため、こうしたテーマにも幅広く対応する事が求められてきています。
教養論文の配点比率が非常に高い特別区の試験で、生半可な対策をとることはあまりおすすめできません。
特別区論文の教材②:公務員予備校の模範解答
- 質の高い解答を入手できる
- 費用が高い
- 入手できる模範回答数に限りがある
次の手段は、公務員予備校の模範解答を入手することです。
公務員予備校は、公務員試験を専門としているだけあって、模範解答の質が高い点がメリット。
特別区の直前対策講義などの単価講義を受講すると、模範解答例を入手できます。
しかし、費用は最低でも1万円以上かかる上に、入手できる問題数は1つの講義につき1~2問ほど。
仮に1講義1万円で受講できたとしても、1問あたり5,000円以上かかる算段です。
正直なところ、あまりコストフォーマンスがよいとはいえません。
特別区論文の教材③:特別区論文の模範解答を収録したnote
- 30代以上の模範解答例を入手できる
- コストパフォーマンスが良い
- 一度購入すればその後も継続的なサポートを受けられる
- 初期費用が数千円かかる
そこで役立つのが特別区小論文の模範解答集です。
この問題集では、従来のテーマはもちろん近年になって出題されるようになったテーマを収録しており、幅広い問題に対応できます。
また、1論文あたり300円以下で購入できるため、コストパフォーマンスにも優れています。
さらに、noteでは購入後も論文の内容を編集する機能がついているため、時勢に合わせて論文の内容をアップデートする予定です。
そのため、noteを購入者は論文に関する継続的なサポートを受けることができます。
一方で、デメリットは費用が数千円かかるため、市販の教材よりも費用が高い点です。
しかし、公務員予備校の講義を受講するよりも費用は安い費用で、特別区をピンポイントで対策できます。
1万円以内で、特別区の合格にぐっと近づくことができるので、特別区の確実な合格を目指す方にはおすすめできます。
noteを制作した私は特別区に10番台で合格した実績があり、その知識を余すことなく収録しています。
これらを活用してインプット量を増やすことが特別区の合格への近道となるでしょう。
あなたが特別区の試験に合格できることを応援しています。
ここまでご覧いただきありがとうございました。