専門スタッフ職とは?
専門スタッフ職とは、
「行政の多様化、複雑・高度化に対応するため、公務において職員が培ってきた高度の専門的な知識や経験を活用するとともに、在職期間の長期化に対応する観点から設置された職」です。
専門スタッフ職は、部下を持たず特定分野の任務に当たる専門スタッフの職種を指します。
これは直接的な部下を持つライン職(係員・係長・課長補佐・室長・課長・審議官・局長・次官)と反対の位置づけとなる職種です。
少し抽象的すぎてわかりにくいので、この職種が作られた裏事情を説明します。
専門スタッフ職が作られた本当の理由とは?
建前では、『公務員として長年培ってきた能力を組織運営に生かす』と謳って作られた役職ですが、実際は出世コースに敗れたキャリア官僚の受け皿です。
もともと、キャリア官僚は出世レースに敗れたら民間企業に天下りしていました。
しかし、近年マスコミなどにより天下りバッシングが激化してきたため、以前ほど積極的に天下りができません。
だけど、出世できるポストの数が限られている。
そこでどうすればいいか考えた官僚が閃きました。
天下りできないなら、天下りポジションの役職を作ればいいんだ!
こうして作られたのが「専門スタッフ職」です。
専門スタッフ職の職務階級
専門スタッフ職は1級〜4級の4つの役職に分類されています。
建前上は『職務に関する専門性や困難度に応じて役職を決定する』と謳っていますが、実際は専門スタッフ職になる直前の組織内のポジションで決まります。
専門スタッフ職俸給表級別標準職務表
職務の級 | 直前の役職 | 標準的な職務 |
1級 | 課長補佐 | 高度な専門的企画・立案業務 |
2級 | 室長 | 特に高度な専門的企画・立案業務 |
3級 | 課長 | 特に高度で困難な専門的企画・立案業務 |
4級 | 部長 | 極めて高度で極めて困難な専門的企画・立案業務 |
4級が最も位が高く、給料も高くなっています。
専門スタッフ職調整手当の支給条件・支給額
専門スタッフ職調整手当は、上記の「専門スタッフ職俸給表級別標準職務表」で3級(課長)以上の職員を対象に俸給(基本給)の10%が支給されます。
専門スタッフ職で3級以上の職は、基本的に課長クラス以上がなる役職なので、実質的に「管理職手当」や「俸給の特別調整額」と似たような位置づけとなっています。
専門スタッフ職は事実上の降格?
少し話がそれますが、専門スタッフ職の位置付けについて書いてみます。
専門スタッフ職は肩書きだけ見れば立派な役職ではありますが、その実態を知っている人にとってみれば『出世競争に敗れた烙印』ととることもできます。
実際にキャリア官僚の給料と比較すると、収入は約2割ほど減少することになります。
また、専門スタッフ職は直接的な部下を持たない「スタッフ職」と位置付けられており、部下への指揮命令権も剥奪されています。
やはり、客観的に見ても専門スタッフ職は事実上の降格と言わざるを得ません。
しかし、キャリア官僚は良い大学を出て、霞ヶ関の激務に耐えながらも出世街道を走ってきた「エリート」です。
そんな彼らにとっては、定年間近を迎えた50代になってから「自分が出世競争から脱落した」という事実を受け止めることは相当つらいことです。
そのため、専門スタッフ職への職種転向は違法だとして裁判所へ提訴する官僚も実際にデてきています。
専門スタッフ職を巡る訴訟
専門スタッフ職への異動を命じられた50代のキャリア官僚が国を被告として訴訟を起こしています。
「専門スタッフ職」への異動が人事権の濫用にあたるとして裁判所へ訴えたのです。
当然ながら裁判の結果は原告側の敗訴となりました。
裁判所が、男性の職種転向は合理的な配置転換の範囲内と認めたからです。
原告の男性にとっては悔しい結果だったとは思います。
所属する組織を訴える従業員なんて、職場で煙たがれること間違いなしですし、きっと職場でも針のむしろ状態だったことでしょう。
ですが、ポストの空きがなく天下り先もない、となればやむを得ない結果なのかもしれません。
仕事に打ち込んでエリート街道を歩んできたキャリア官僚でさえ、定年間近になってから悲惨な結末を迎えることも知っておいて損はないと思います。
【まとめ】専門スタッフ職は公務員の雇用を守るための恵まれた制度
専門スタッフ職への配置転換は、たしかに「出世コースに敗れた」という烙印となってしまう一面があることも否めません。
ですが、それでも専門スタッフ職の年収水準は800万円程度を保つことができますし、3級(課長)職以上であれば専門スタッフ職調整手当(基本給の10%をプラス)も支給されます。
民間企業では出世競争に敗れた50代がばっさばさリストラされるのに比べたら、天と地の差ほど恵まれていることもまた事実です。
その点に関しては、やはり公務員は非常に恵まれた職業であるといえます。
あなたの職業選択の参考になれば幸いです。
ここまでご覧いただきありがとうございました。