こういった疑問にお答えします。
公務員の昇任試験とは?
公務員の昇任試験とは、現職より上位の職に任命されるための試験です。
公務員にはおおむね次のような役職があり、上の役職を昇任するためには昇任試験に合格する必要があります。
これを資格任用制(メリット・システム)とも呼びます。
地方公務員の昇任試験
地方公務員の昇任試験は各自治体ごとに条例で基準を設定します。
地方自治体の自主性に任せられているからです。
例えば、東京都庁の場合、以下のような階級がつけられています。
- 主事(1級職)
- 主任(2級職)
- 係長(3級職)
- 課長(4級職)
- 部長(5級職)
- 局長(指定職)
- 副知事(指定職)
それぞれ1つ上の役職に上がるためには、昇任試験に合格する必要があります。
公務員の昇任試験を受ける?受けない?
公務員は必ずしも昇任試験を受ける必要はありません。
少し前までは
バリバリ出世して働くのが当然!
という風潮があり、昇任試験を受けないのはありえない!と言う風潮がありました。
しかし、ワークライフバランスの考え方が広まり、あえて昇任試験を受けないで出世しない公務員も増えてきています。
【公務員の昇任試験】昇任のメリット・デメリット
- 年収が増える
- 裁量権が増える
- ステータスを得られる
- 責任が大きくなる
- ヤバイ部下に手を焼く
- 上司と部下から板挟みにあう
昇任試験を受験するかどうかを自分で決定できるようになったからこそ、しっかりとメリット・デメリットを比較して受験を決めるべきだと思います。
そこで、昇任試験受験のメリット・デメリットを比較してみましょう!
【公務員昇任のメリット】年収が増える
公務員の昇任試験を受ける最大のメリットは給料が増える点です。
公務員は若いうちは薄給です。
そのため、少しでも年収を上げるために昇任試験を受験する人が大半です。
実際、最低でも主任級にならないと、入庁時とほとんど給料が増えない仕組みになっています。
公務員の昇任試験でどのくらい給料が増えるの?(東京都庁で主事→主任へ昇任するケース)
では、公務員の昇任試験で昇進した場合、実際にどのくらい給料が増えるのか解説します。
例えば、東京都庁で主事から主任に昇任すると、年収が¥159,516増えます。
- 主事
¥220,700(1級49号俸)×120%(地域手当)×12ヶ月=¥3,178,080 - 主任
¥226,900(2級17号俸)×120%(地域手当)×12ヶ月=¥3,267,360
→給料分は1年間で「¥89,280」アップします。
- 主事
(¥220,700(給料月額)+ ¥44,140(地域手当))×4.5ヶ月 = ¥1,191,780 - 主任
(¥226,900(給料月額)+¥45,380(地域手当)+ ¥8,168(職務段階別加算額))× 4.5ヶ月 = ¥1,262,016
→ボーナス分は1年間で「¥70,236」アップします。
- 主事
¥3,178,080 + ¥1,191,780 = ¥4,369,860 - 主任
¥3,267,360 + ¥1,262,016 = ¥4,529,376
→主事から主任へ昇任することで、1年間で¥159,516年収をアップできます!
同じ労働時間でも年間で約16万円も給料が増えるのでコスパが良くなります。
また、高い給与テーブルに基づいて決定されるので、残業代も大きくなるため、昇任する人としない人の差はますます開いていきます。
さらに、役職が高い人の方が昇給幅がより大きくなるため年々その差は開いていきます。
【公務員昇任のメリット】裁量権が増える
公務員昇任のメリットは裁量権が増えることです。
役職が上がるほど自分が取り扱える権限が大きくなるからです。
自分が指示できる部下の数が増え、動かせる事業の幅も大きくなるためややりがいアップに繋がりやすいです。
【公務員昇任のメリット】ステータスを得られる
公務員昇任のメリットはステータスを得られることです。
「昇任する人=優秀な人」であると言う印象を与えられるからです。
出世することで、公務員組織内、家族や友人関係などのプライベートにおいて良い評価を受けられます。も
役所内では役職の序列が絶対なので、係長、課長、部長と昇進していくにつれて多くの職員から畏敬の念を持って接してもらえます。
【公務員昇任のデメリット】責任が大きくなる
公務員昇任の最も大きなデメリットは責任が大きくなることです。
役職があがれば、部下の仕事の結果に対して責任を持たなくてはいけません。
特に、公務員は仕事の性質上、住民と接する機会が多く、部下のミスの謝罪などで住民からのハードクレームに晒されやすい傾向にあります。
さらに、公権力を行使する公務員は誤った対応を行うと、相手方から法的に訴訟されるリスクもあります。
部下のミスが原因で、住民から訴えられて裁判に巻き込まれるケースなども実際に聞きますね。。。
【公務員昇任のデメリット】ヤバイ部下に手を焼く
昇任によるもう一つの大きなデメリットは仕事をサボる部下に手を焼くことです。
主事クラス(平社員クラス)の職員には、一定数仕事をサボる「ヤバい人」が存在するからです。
仕事がひと段落したし、今日はもうやることないから少し手を抜こうかな〜
なんていう生優しいサボりではありません。
「ふらっと席を立って2時間くらい帰ってこない人」とか「お客さんが来ていても窓口に出ないで、1日中書類を読んでいるだけの人」など民間企業であればとっくにクビになっているような人がたくさん存在します。
(詳しくは以下の記事で解説しています)
https://taroling.com/negligence_atab
そのような「ヤバイ人」でも身分保障の手厚い公務員ではクビになることはまずありません。
結果として、そのような人を部下にもつ係長や課長はマネジメントに手を焼くハメになります。
【公務員昇任のデメリット】上司と部下から板挟みにあう
もう一つの昇任のデメリットは上司と部下から板挟みにあうことです。
出世して中間管理職になれば、上から押し込まれ、下から突き上げられるような板挟みに必ずあいます。
- 人手不足なのに必要な人員を配置してくれない
- 組織や仕事の問題を見てみぬふりする
- 過度な残業を強いて不満が続出
- 部下同士が喧嘩やいざこざを起こす
- 思った以上に成果を上げてくれない
中間管理職になれば誰しもが経験する道かもしれませんが、かなりつらい思いをすると思います。
【公務員昇任試験の実情】昇任試験の受験率は低下傾向にある!
実は公務員の昇任試験の受験率は、年々低下傾向にあります。
これはどの役所でもおおむね同じような傾向にあります。
公務員の昇任試験の受験率が低下傾向にあるのは主に次の3つの理由が挙げられます。
- 責任が大きい割に給料が安い
- 人員が少なくなる一方なのに業務量が増大
【昇任試験の受験率低下の原因】責任が大きい割に給料が安い
公務員の昇任試験で受験率が低下している最大の原因は、責任が大きい割に給料が安いことです。
昔よりも住民が役所に求めるニーズが大きくなっている一方で、少子高齢化によって公務員の給料は徐々に減少しつつあるからです。
住民からのクレームは上位の役職者が全て受け止めなくてはいけない割に、部署内の予算が足りずに残業代を付けられないケースはかなり多く見かけます。
また、公務員は最低限の給料は保証されているため、
無理に出世して、ちょっとのお金をもらうためにつらい思いをするよりも、今の給料のまままったり働きたいな〜
と考える人は非常に多いです。
【昇任試験の受験率低下の原因】人員が少なくなる一方なのに業務量が増大
昇任試験の受験率低下の原因は、人員が少なくなる一方なのに業務量が増大していることです。
原因はシンプルにお金が不足しているからです。
近年は、どの組織も少子高齢化で税収が減少することを見越して予算を削減しています。
(最近はコロナウィルス対策で役所から多くの現金が支出されました。)
人を雇えない→残業が常態化する→疲労で心身を故障する職員が出る→さらに人手不足、、と言う悪循環になっている部署も多く存在します。
そのような厳しい環境の中で組織を運営していかなければならないため、上位の役職者はマネジメントを行うのが大変です。
【悲報】だけど出世しない公務員の将来は明るくない
出世しても仕事が大変だから、昇任しない方がいいのかな〜?
と考えている方もいらっしゃると思います。
しかし、個人的には出世しない公務員の将来はそんなに明るくないと思っています。
理由は公務員の組織が昔に比べて明らかに余裕がなくなっているからです。
出世しないで程々に働いている職員を守れるほど、お金も資源もなくなってきています。
その結果、出世しない公務員には今後以下のようなことが起こる可能性が見込まれます。
- これまで以上に給料が削減される
- リストラの対象になるかも?
昇進しない公務員はこれまで以上に給料が削減される
昇任しない公務員はこれまで以上に給料が削減されます。
この現実は絶対に避けられません。
なぜならば昇給しない公務員の給料はすでに削減されているからです。
調べてみると、市区町村の中ではもっともお金もちである東京都庁や特別区ですら平社員クラスの給料をすでに削減しています。
昇任しない公務員のリストラもありえる、、、?
昇任しない公務員がリストラの対象となる可能性もあります。
理由は税収が減少して運営が立ち行かなくなる自治体が今後増えてくるからです。
現在の地方公務員法では、財政難による職員のリストラは認められています。
(これを「分限処分」といいます)
財政難で経営がなりたたなくなった自治体が職員のリストラに踏み切るケースも出てくるかもしれません。
すでに北海道の夕張市など財政破綻している自治体もすこしずつ出てきています。
【結論】公務員は昇任試験をとりあえず受験してみるのがおすすめ!
こういった事情を踏まえた上で、公務員は昇任試験をとりあえず受験してみるのがおすすめです。
なぜならば、公務員には「希望降任制度」が導入されているからです。
公務員は希望すれば降格できる「希望降任制度」がある
出世したいけど出世してつらかったらどうしよう、、
と考えて、昇任試験を受けるのをためらう方もいると思います。
しかし、公務員は希望すれば役職を降任できる「希望降任制度」があります。(徐々に多くの役所で取り入れられてきている制度です。)
希望降任制度を活用することで、
とりあえず出世してみて、自分に合わなかったら降任しよう!
という選択肢を取ることが可能となります。
出世しない公務員がリストラの対象になるかも、、、?
公務員が昇任試験を受けるべきもう一つの理由は、出世しない公務員がリストラの対象になる可能性があるためです。
現状、すでに出世しない公務員は、出世して役職がついている公務員と比べて給料が低く抑えられている傾向にあります。
今後、日本の財政状況がさらに悪化したとき、年齢が高くて給料が高い割に組織への貢献度が低い高齢の公務員がリストラされる可能性は充分にあります。
明らかな首切りがなくとも、出世しない高齢職員の給料が今よりもはるかに低く抑えられるのはかなり起こりうる話だと思います。
【まとめ】公務員は自分のライフスタイルに合わせて昇任試験を受けるか考えよう(ただし、できれば受験した方が得)
公務員は自分のライフスタイルに合わせて昇任試験を受けるか考えましょう。
ライフスタイルが多様化した現代では、必ずしも「出世=幸せ」という図式は一般化しなくなっています。
また、公務員の昇任には以下のようなメリット・デメリットがあります。
- 年収が増える
- 裁量権が増える
- ステータスを得られる
- 責任が大きくなる
- ヤバイ部下に手を焼く
- 上司と部下から板挟みにあう
ただし、今後の公務員が置かれている情勢(税収の減少、リストラの可能性)などを考慮すると、とりあえず昇任試験を受けておいた方が無難です。
- これまで以上に給料が削減される
- リストラの対象になるかも?
万が一、管理職が向かなかったとしても「希望降任制度」を活用することでリスクヘッジを行えます。
昇任しようか迷っている人はとりあえず試験を受けた方があとから後悔しにくいと思いますよ
ここまでご覧いただきありがとうございました。