病気休職とは?
職員が心身の故障のため長期の休養要する場合に、期間を定めて行う分限処分のひとつです。
分限処分とは、職務の遂行に支障がある場合に、公務の効率性を保つことを目的としてその職員の意思に反して行われる処分です。
職務が行えるようになるまで、職員を回復させることを目的としています。
病気休職を取得できる期間
公務員の病気休職は最大3年間取得できます。
ただし、任意に取得できるものではなく医師の診断に基づく必要があります。
つまり、通常の休暇のように職員本人が「大体1年間くらい病気休職を取りたいです!」と言っても希望が通るとは限りません。
「あなたの病状は軽いので、病気休職期間は2ヶ月間とします。」
と役所側(人事課)が休職期間を決定します。
実際に病気休職を取得する場合、ほとんどの役所では2ヶ月程度の短期間の決定となることが多いです。
いっぺんに長期の病気休職を決定すると、予想外に早く回復した時に職場復帰を命じることができなくなるからです。
病気休職は3年を限度に更新される
一方で、「病気休職は一度期間が決まったら、もうそれ以上休めないの?」
という心配をお持ちの方もいるかと思いますが、病気休職は3年間を上限として更新されます。
「あなたは2ヶ月経過しても、病気が治らなかったのでさらに2ヶ月更新しましょう」
という形で、どんどん病気休職期間が更新されていくケースがほとんどです。
病気休職は何度でも取得可能!
公務員の病気休職は何度でも取得可能です。
病気休職制度は公務員の身分保障として手厚く定められており、原則的に取得回数に制限はありません。
ただし、病気休職の濫用を防ぐ為に一定の制限が設けられています。
【注意点】過去1年間に同一の病状で病気休職している場合、通算して3年間までしか病気休職を取得できない
過去1年間に同一の病状で病気休職している場合は通算して3年間までしか病気休職を取得できない、というルールがあります。
症状や病院から関連性がある病気は、病名が違っていても同一の病状とみなします。
メンタルヘルス系
- うつ病
- 躁鬱病
- 適応障害
- 不安障害
- 自律神経失調症
腰痛関連
- 腰痛
- 椎間板ヘルニア
- 変形性腰痛症
これら同一の病状で休暇を取得していた場合は、過去1年間に合計で90日までしか病気休暇を取得できません。
もちろん、
「メンタルヘルスで病気休職を3年間取得していた職員が、腰痛で病気休職を申請する」
と言ったように、別の病状で病気休職を取得していた場合はそれぞれ別個に病気休職を取得できます。
病気休職の取得条件
病気休職を取得する際に必要な条件は以下の通りです。
- 病気休暇を上限まで取得していること
- 医師の診断書(もしくは医師の診察)による裏付けがあること
病気休暇を上限いっぱいまで取得していること
病気休職を取得する為には、病気休暇を上限いっぱいまで取得していることが条件となります。
病気休職は、病気休暇を利用しても病気が回復しなかった場合に使うものだからです。
病気休暇だけで病気から回復できれば、わざわざ病気休職処分を行う必要がありません。
医師の診断書(もしくは医師の診察)による裏付けがあること
病気休職を取得するためには、病気休暇を取得する客観的な裏付けとして医師の診断書(医師の診察)が必要になります。
これは病気休職の恣意的な濫用を避ける目的で存在しています。
なお、病気休職のための診断費用は役所が負担してくれます。
病気休職中の収入
公務員は病気休職中も給料が一定額支給されます。
ただし、病気休職を取得している期間に応じて以下のとおり支給額が異なります。
休職1日〜365日(休職開始から最初の1年間)
- 毎月の収入:給料の80%
- 【ボーナス】
期末手当:30%〜100%
勤勉手当:0%〜100%
休職:366日〜910日(休職開始2年目から3年目の6ヶ月目まで)
- 毎月の収入:給料の67%の傷病手当
- 給料・ボーナス:0円
詳細について解説していきます。
休職してから最初の1年間は給料の80%が支給される
公務員は、休職してから最初の1年間は給料(基本給・扶養手当・地域手当・広域異動手当・研究員調整手当・住居手当の合算額)の80%が支給されます。
これらの給料については、以下で詳しく解説しています。
基本給(俸給)
https://taroling.com/basic-salary/
扶養手当
https://taroling.com/dependent-allowance/
地域手当
https://taroling.com/area-allowlance/
広域異動手当
https://taroling.com/wide-area-change-allowance/
研究員調整手当
https://taroling.com/researcher-adjustment-allowance/
住居手当
https://taroling.com/government-official-housing-allowance/
病気休職中に支給されない手当
一方で、病気休職中は以下の手当が支給されません。
- 通勤手当
- 管理職手当
病気休職中は、職場に通勤しないから通勤手当は必要ないし、管理職業務も行わないから管理職手当も支給されないというわけです。
休職1年目のボーナスは休職期間に応じて支給される
休職1年目のボーナスは休職期間に応じて支給されます。
休職中の公務員のボーナスは、「期末手当」と「勤勉手当」の2つで構成されています。
これら2つはざっくり以下のようなイメージの性質を持っています。
- 期末手当:真面目にコツコツ働き続けたことに対するご褒美
- 勤勉手当:業務の成果を挙げたこと対するご褒美
それぞれだいたい「期末手当:勤勉手当 = 1:1」くらいの割合でボーナスを構成しています
公務員のボーナスについては、病気休職の期間に応じてこれら2つの手当てが減額される仕組みです。
(ボーナスの「期末手当」と「勤勉手当」については以下の記事で詳しく解説しています。)
期末手当
https://taroling.com/term-end-allowance/
勤勉手当
https://taroling.com/diligent-allowance/
病気休職中のボーナスの「基準日」と「算定期間」
公務員のボーナスは毎年6月と12月に年2回支給されます。
6月のボーナスと12月のボーナスは、「基準日」と「算定期間」の2つを使ってそれぞれ別個に計算されます
ボーナスの基準日
基準日とは、職員がボーナスの支給対象となるか判断するための日です。
基準日は、毎年6月1日と12月1日と定められています。
この日に普通に勤務している公務員はボーナス支給の対象となりますが、休職している職員はボーナス支給対象から外れるケースもあります。
ボーナスの算定期間
算定期間とは、職員の職務実績に基づいて支給割合を決定するための期間です。
具体的には、基準日前から過去6ヶ月間を指します。
普通に勤務している公務員はボーナスが100%支給されますが、この期間に休職している期間が多いほどボーナスの支給割合が減少していきます。
つまり、6月と12月のボーナスはそれぞれ以下の基準によって計算されます。
6月のボーナス
基準日:6月1日
算定期間:12月〜5月
12月のボーナス
基準日:12月1日
算定期間:6月〜11月
これらの計算方法を前提に、病気休職期間中の期末手当と勤勉手当について解説します。
休職してから1年間の期末手当
期末手当の基準日
期末手当は、病気休職中の公務員にも支給されます。
期末手当の算定期間
期末手当は算定期間中に取得している病気休職期間に応じて、30%~100%の範囲で期末手当が減額されます。
病気休職期間と期末手当の支給割合の関係
病気休職期間 | 割合 |
3ヶ月以上 | 30% |
1ヶ月以上3ヶ月未満 | 60% |
1日以上1ヶ月未満 | 80% |
0日 | 100% |
在職期間に応じて、期末手当の
85270円~284232円支給されます。(在職期間0日~6ヶ月)
これらの期末手当の8割が支給されるので、病気休職中の期末手当は、
68216円~227386円の範囲で支給されます。
在職期間 | 割合 | 期末手当の額 |
6ヶ月 | 100% | 227386円 |
5ヶ月以上6ヶ月未満 | 80% | 181909円 |
3ヶ月以上5ヶ月未満 | 60% | 136432円 |
3ヶ月未満 | 30% | 68216円 |
休職してから1年間の勤勉手当
勤勉手当の基準日
勤勉手当は、基準日に病気休職している公務員に支給されません。
勤勉手当の算定期間
期末手当は算定期間中に取得している病気休職期間に応じて、0%~100%の範囲で期末手当が減額されます。
勤務期間 | 割合 |
6ヶ月 | 100% |
5ヵ月15日以上6ヶ月未満 | 95% |
5ヶ月以上5ヶ月15日未満 | 90% |
4ヶ月15日以上5ヶ月未満 | 80% |
4ヶ月以上4ヶ月15日未満 | 70% |
3ヶ月15日以上4ヶ月未満 | 60% |
3ヶ月以上3ヶ月15日未満 | 50% |
2ヶ月15日以上3ヶ月未満 | 40% |
2ヶ月以上2ヶ月15日未満 | 30% |
1ヶ月15日以上2ヶ月未満 | 20% |
1ヶ月以上1ヶ月15日未満 | 15% |
15日以上1ヶ月未満 | 10% |
15日未満 | 5% |
0日 | 0% |
病気休職を取得してから2年目以降の収入
病気休職を取得してから1年間が経過すると、役所からの給料が一切支給されなくなります。
「え、それじゃあ生活できなくなるじゃん!」と思いますが、安心してください。
代わりに公務員共済組合から「傷病手当金」が支給されます。
傷病手当金の支給額
傷病手当金はおおむね「給料の額面の3分の2」が毎月支給されます。
傷病手当金の支給期間
傷病手当金の受給開始から1年6ヶ月まで支給されます。
つまり、病気休暇1年目に支給される給料と合算すると、合計で2年6ヶ月間も収入を得ることができます。
休職者の収入の具体例
病気休職者の収入の具体例を解説します。
今回は、以下のような公務員を想定します。
- 4年生大学新卒2年目:(基本給:182200円(1級29号俸))
- 東京都23区内勤務(地域手当:36440円(基本給の20%相当)
- 公務員2年目の4月1日から病気休職を取得
この人が公務員2年目の4月1日〜3月31日の間にもらえる収入額を算出します。
休職1年目の毎月の給料
この公務員が普通に勤務している場合、次の給料月額が手に入ります。
- 基本給:182200円(1級25号俸)
- 地域手当:36440円
- 合計:218640円
この人が病気休職を取得すると、この給料月額の80%を取得できるので
218640円 × 80% = 174912円
つまり、毎月約17万円程度の給料を受け取ることができます。
休職1年目のボーナス
6月のボーナス
- 期末手当:182200円(基本給) + 36440円(地域手当) × 130%(期別支給割合)× 60%(在職期間別割合)= 210623円
- 勤勉手当:0円(基準日である6月1日に休職しているため)
- 合計:210623円
12月のボーナス
- 期末手当:182200円(基本給) + 36440円(地域手当) × 130%(期別支給割合)× 30%(在職期間別割合)= 196412円
- 勤勉手当:0円(基準日である6月1日に休職しているため)
- 合計:196412円
1年間のトータル収入
- 1年間でもらえる給料:2098944円
- 1年間でもらえるボーナス:407035円
- 1年間の合計収入:2505979円
つまり、新卒2年目の公務員でも1年間まるまる休んで約250万円程度の収入を得ることができます!
病気休職と昇給
昇給日である4月1日時点で病気休職を取得している場合、昇給しません。
また、復職時に昇給しますが、休息した日数に応じて昇給号数が抑制されます。
病気休職と退職手当
基礎在職期間から勤務しなかった期間(月数)の2分の1が除算されます。
3年たっても病気が治らない場合は分限免職処分となる
病気休職期間の上限である3年間が経過しても病気が治らない場合は、分限免職処分となります。
ひらたく言えば「クビ」となります。
医師2名の診断によって回復の見込みがない場合は分限免職処分(クビ)となります。
分限免職処分を行うには、医師2名による診断が必要となります。
分限免職の恣意的な濫用を避ける目的で設定されています。
【まとめ】公務員の福利厚生の中でも病気休職は最強の切り札!
数ある公務員の身分保障の中で、個人的に病気休職は最強の福利厚生だと思います。
民間企業では、公務員のように3年間も病気休職を取得できる企業はよほどの大手企業を除いてほとんどありません。
なにより、制度が整っていてもそれを受け入れる文化がなければ、病気休職制度はうまく活用できません。
会社の利益のために、病気になった人に退職をせまるなんて話もいまだにチラホラきいたりします。
一方で、公務員の職場には、「病気なんかで休んでないで働けこら!!!」なんて、ストイックな考えの人は公務員にはあまりいません。
むしろ「無理しないでゆっくり休んでね〜」という考えの人が多いように感じます(あくまで私の市役所の話ですが。)
公務員は身分保障が手厚くなされており、その最も象徴的な制度が病気休職制度です。
体がもともと弱い方、メンタルが弱くて社会人が務まるか不安な学生さんには、公務員はとてもおすすめな職業です。