超過勤務手当とは?
正規の勤務時間(通常は8時30分〜17時15分)を超えて勤務した職員に支給される手当です。
超過勤務手当は、勤務時間や勤務日に応じて、1時間あたりの給料に対して125%~175%の超過勤務手当が支給されます。
いわゆる「残業代」と呼ばれる手当です。
超過勤務手当の支給額
超過勤務手当は以下計算式で算出できます。
勤務1時間当たりの給与額×支給割合×勤務時間数
つまり、超過勤務手当は以下の3つの要素で構成されています。
- 勤務1時間あたりの給与額
- 支給割合
- 勤務時間数
これら3つの要素についてそれぞれ解説していきます。
勤務1時間あたりの給与額
勤務1時間あたりの給与額は、要するに時給単価を表しています。
勤務1時間あたりの給与額は以下の式で算出できます。
(基本給 + 地域手当 + 広域異動手当 + 研究員調整手当)× 12(ヶ月)/1週間あたりの勤務時間 × 52(週間)
(※1円未満の端数は四捨五入します)
基本給
基本給については、職種と役職ごとに定められている俸給月額表に基づいて算出されます。
地域手当
勤務している地域の物価水準等に合わせて支給される手当です。
民間企業の賃金水準が高い都市部の手当額が大きくなっています。
最大で基本給の20%相当額の手当が支給されます。
広域異動手当
広範囲の異動を伴う国家公務員に対して、3年間支給される手当です。
最大で基本給の10%相当額の手当が支給されます。
(ほとんどの公務員には支給されないので、考慮しなくて構いません)
研究員調整手当
採用が困難な地域に住む研究職公務員に支給される手当です。
最大で基本給の10%相当額の手当が支給されます。
(ほとんどの公務員には支給されないので、考慮しなくて構いません)
1週間あたりの勤務時間
正規の常勤職員であれば、週38.75時間が正規の勤務時間です。
また、短時間勤務職員は雇用形態に応じて、週15時間30分〜31時間までの範囲内で働きます。
支給割合
支給割合とは、勤務した日や時間数に応じてどのくらい残業代を支給するかを割合として定めたものです。
支給割合は以下の表のとおり表すことができます。
支給割合表
残業形態 | 60時間内 | 60時間超 | ||
通常の残業の場合 | 平日 | 深夜以外 | 125% | 150% |
深夜 | 150% | 175% | ||
土曜日等・休日 | 深夜以外 | 135% | 150% | |
深夜 | 160% | 175% | ||
短時間勤務の7時間45分以内の時間外勤務 | 深夜以外 | 100% | 150% | |
深夜 | 125% | 175% | ||
週をまたいで振替休日をとる場合 | 25% | 50% |
休日に残業をすれば、残業代の支給割合が増加します。
また、月60時間を超えて残業をすると、支給割合が +25%されます。
端数が出た場合の取り扱い
30分未満の端数が出たら切り捨てて、30分以上の端数が出たら切り上げます。
(支給割合が異なる勤務時間がある時は、それぞれの支給割合ごとに時間を計算します。)
例えば、
月の平日の残業時間が30時間45分で、休日の残業時間が10時間15分の場合、
- 平日の残業時間:30時間45分→45分を切り捨てて、30時間
- 休日の残業時間:10時間30分→15分を切り捨てて、10時間
となります。
超過勤務手当の計算例
超過勤務手当の計算例をご紹介します。
今回は次のようなケースを想定します。
- 4年生大卒1年目事務職(行政職俸給表(一)の1級25号俸)
- 東京都23区内勤務(地域手当20%)
- 独身で扶養している親族は0人
- ひと月で、平日80時間、休日20時間、合計で残業100時間
上記の場合、どのくらいの超過勤務手当が支給されるか計算します。
勤務1時間あたりの給与額を算出する
上記の例から、勤務1時間あたりの給与額を算出します。
- 基本給:182200円
- 地域手当:36440円
- 広域異動手当:0円
- 研究員調整手当:0円
- 1週間あたりの勤務時間:38.75時間
よって、勤務1時間あたりの給与額は
((182200円 + 36440円)× 12 )/ 38.75 × 52 = 1302円(四捨五入)
つまり、4年生大学新卒の事務系公務員は時給1300円くらいということになります。
超過勤務手当の金額を算出する
- 残業60時間までの分(平日分):1302 × 125% × 60 = 97650円
- 残業60時間を超える(平日分):1302 × 150% × 20 = 39060円
- 残業60時間を超える(休日分):1302 × 135% × 20 = 35154円
よって、合計171864円の超過勤務手当が支給されます。
ちなみに、上記は私が1年目で人事課に配属されたときに受け取った超過勤務手当の額とほぼ一緒です。
公務員1年目にして額面が40万円を超えたので結構ウハウハでした。笑
超勤代休指定
超勤代休指定とは、月の残業時間が60時間を超えた場合、使用者が労働者に対して代休を指定することを定めた制度です。
月60時間を超える残業は心身への負担が大きく、労働者の健康を害する恐れがあるためこの制度が設けられました。
例えば、月60時間を超えて残業した場合、公務員の1日の勤務時間である7.75時間を残業時間を引き換えに、1日の休みを取得します。
代休取得のルール
月60時間以上の残業をした場合、以下のルールによって振替休日を取得する必要があります。
- 月60時間を残業した月の翌月から2ヶ月以内
- 振替休日は、「4時間」or「7時間45分」のいずれか
- 振替休日は、始業時間か終業時間と連続していること
週をまたいで超勤代休指定をした場合、代休 + 残業代が支給される
週をまたいで超勤代休指定をした場合、代休に加えて残業代が支給されます。
振替休日を取得すると、振替元の週の労働時間が正規の勤務時間である週38.75時間を超えるからです。
正規の勤務時間以上に働いたことになるため、残業代が支給されます。
代休指定と超過勤務手当の関係票は以下の表で表すことができます。
振替休日と超過勤務の換算表
残業形態 | 換算率 | ||
通常の残業の場合 | 平日 | 深夜以外 | 25% |
深夜 | 15% | ||
土曜日等・休日 | 深夜以外 | 15% | |
深夜 | 50% | ||
短時間勤務の7時間45分以内の時間外勤務 | 深夜以外 | 50% | |
深夜 | 50% | ||
週をまたいで振替休日をとる場合 | 25% |
公務員には残業時間の上限が設けられている
公務員には残業時間の上限が設けられています。
電通で新卒女性が過労死した事件をきっかけに、国が超過勤務の規制を打ち出したからです。
制度的には、超過勤務手当はしっかりと支給されますが、方針として極力残業を減らそうということになっています。
- 月の残業時間は45時間まで
- 年間の残業時間は360時間まで
- 他律的な業務が多い部署は1か月につき100時間未満、年間で720時間かつ2~6カ月で平均80時間以内
さらに、健康管理対策として以下の場合は、医師の面談を使用者に義務付けました
- 月に100時間以上、または2~6か月平均で80時間を超える超過勤務を命じた場合
- 月につき80時間を超えて勤務する場合、疲労の蓄積が認められる職員本人からの申し出がある
要するに、長時間残業をした職員は医師の面談を受けることで過労死を防ごうと決めています。
【まとめ】超過勤務手当は若い公務員と関係の深い手当
若い公務員は超過勤務手当が支給されやすい、忙しい部署へ配属されることが多いです。
若い人は、生産性が高い割に時給単価が安くて残業代の予算を抑えることができるからです。
そういった役所側の都合によって、おそらく日本全国どの役所でも若い公務員が激務部署に配属されるケースは多いことでしょう。
ですが一方で、薄給の若手公務員にとって超過勤務手当をもらうのは嬉しい面もあります。
月に1〜2万円増えるだけでも生活水準が大きく上がります。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
超過勤務手当以外の手当については以下の記事でご紹介しています。