特別地方公共団体とは
特別地方公共団体とは、地方公共団体のうち、目的・権能・組織が一般的ではないものを指します。
非常にざっくりとした表現ですが、いわゆる普通の都道府県や市町村ではない自治体を指しています。
具体的には以下の3種類が存在します。
- 特別区
- 地方公共団体の組合
- 財産区
①特別区
特別区とは、都の区を指します。
特別区は、法令で東京都が処理すると定められている事務処理以外は、原則として市と同じ事務を行います。
特別区は憲法上の地方公共団体ではない?
1952 年地方自治法改正により、東京都特別区区長の公選制が廃止され、特別区の議会が都知事の同意を得てこれを任命することとされました。
これに対して憲法違反だという主張がされましたが、最高裁判所は後上kんという判断を取りました。
特別区は、東京都の内部団体という位置付けのため、区長を公選しなくても問題はないという判決をとった。
(憲法では、地方公共団体の長は、住民が直接選挙しなくてはいけない決まりがある)
地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
憲法 第93条2項
要するに、東京都の主張を生かすために特別区を地方公共団体ではないという都合の良い解釈を取ったようです。
東京都は全てが特別区となる可能性を秘めている
都の区域であれば、市町村の区域の全部または一部に特別区を設置することが可能です。
都内の市町村の区域の全部又は一部による特別区の設置は、当該市町村の申請に基づき、都知事が都の議会の議決を経てこれを定め、直ちにその旨を総務大臣に届け出なければならない。
地方自治法 第281条の4第8項
②地方公共団体の組合
地方公共団体の組合とは、地方公共団体の事務の一部を共同で処理する法人団体で、①一部事務組合と②広域連合の2種類が存在します。
一部事務組合
一部事務組合とは、地方公共団体がその事務の一部を共同して処理するた
めに設ける団体を指します。
主に、ゴミ処理場、救急、消防など複数の自治体が共同で行った方が効率的な仕事について結成される機会の多い組合です。
一部事務組合は全国に1314団体存在しており、若干減少傾向にあります。(平成29年度末時点)
- 東京23区清掃一部事務組合
東京都23区内のゴミ処理を担当している組合 - 東京都四市競艇事業組合
多摩川競艇場を運営するため、小平市、日野市、東村山市、国分寺市の4市合同で結成された組織
全部事務組合(現在は廃止されている)
全部事務組合とは、町・村のみがその事務の全部を共同して処理するた
めに設ける団体を指します。(市や特別区は全部事務組合を設立できません。)
複数の自治体の全部の仕事を一つの団体で行うため、実質的には市町村合併と同じ意味合いを持ちます。
ただし、市町村合併とは異なり議決により、全部事務組合を解散して元の町村に戻すことができます。
しかし、昭和35年以降、この制度を活用する自治体が1つも存在しなかったため、2011年の自治法改正の際に廃止されて現在はなくなった組合制度です。
特例一部事務組合
特例一部事務組合とは、一部事務組合に固有の議会を設置せずに、その権能を構成団体の議会が行うことができるとする組合です。
一部事務組合の特殊系として、平成24年の地方自治法改正の際に誕生しました。
複合的一部事務組合
複合的一部事務組合とは、複数の共同処理する事務が複数の市町村間で異なる場合でも1つの組合で処理することができる制度です。
これは一部事務組合の特例として定められており、1974年の地方自治法改正の際に定められました。
広域連合
地方公共団体が、広域にわたり処理することが適当であると認められる事務を処理するために設ける団体です。
広域連合は、一部事務組合よりもさらに様々な広域的ニーズに柔軟かつ効率的に対応するために平成7年6月から新しく開始された制度です。(つまり、一部事務組合よりも先進的な制度と言えます)
一部事務組合と取り扱う仕事は似ていますが、広域連合には以下のような特徴があります。
- 異なる種類の仕事を持ち寄って処理できる
- 広域連合の仕事と関連する団体の仕事を設定できる
- 国や都道府県から権限委譲を受けられる
- 長や議員は選挙で選ばれ、住民による直接請求を行える
広域連合は全国に117団体存在しており、一部事務組合にかわって若干の増加傾向にあります(2020年4月現在)
一部事務組合と広域連合の違い
- 似通った同一の事務を持ち寄って共同で処理する
- 国と都道府県から権限委譲を受けることができない
- 異なる種類の事務仕事を持ち寄って共同で処理できる
- 国と都道府県から権限委譲を受けられる
地方公共団体の組合は許可により設置される
地方公共団体の組合は許可によって設置されます。
国の行政機関又は都道府県の機関は、普通地方公共団体からの法令に基づく申請又は協議の申出(以下この款、第二百五十条の十三第二項、第二百五十一条の三第二項、第二百五十一条の五第一項、第二百五十一条の六第一項及び第二百五十二条の十七の三第三項において「申請等」という。)があつた場合において、許可、認可、承認、同意その他これらに類する行為(以下この款及び第二百五十二条の十七の三第三項において「許認可等」という。)をするかどうかを法令の定めに従つて判断するために必要とされる基準を定め、かつ、行政上特別の支障があるときを除き、これを公表しなければならない。
地方自治法 第250条の2
財産区とは
財産区とは、市町村または特別区の一部であるが、当該市町村等から独立して財産や施設を所有し、管理・処分・廃止のみを行う団体です。
財産区成立の発端は、市町村大合併の際に、それまで地域住民が共同で私的に管理していた地域(現在の財産区)を国が公有地として取り上げようとしたことです。
地域住民の大反対が起きて合併が進まなかったことから、合併を推し進めるため特別に自治権を認めたいわば「アメ」のような存在として作られました。
そして、この財産区には、山林、畑、ため池、墓地、温泉、観光農園などが存在します。
財産区は「条例」で定められる(「規則」ではない)
財産区は条例によって定められます。
さらに、財産区の名称を変更する場合はあらかじめ知事への競技が必要となります。
財産区は市区町村の一部である
財産区は市区町村の一部とされています。
そのため、都道府県・地方公共団体の組合・合併特例区などには設置できません。
合併特例区とは
合併特例区とは、市町村合併の際に作られる特別地方公共団体で、合併される側の市町村の区域において最大5年間作られる区域です。
要するに、これは合併する側の住人と合併される側の住民の心理的な軋轢を取り除くために作られた制度です。
合併する側の住人も合併される側の住人も、それまで自分たちのやり方で自治体運営をしていたわけなのでいきなり完全に合併すると意見の対立が起こって行政運営がうまく進みません。
合併までの移行期間として合併特例区を設けています。
合併特例区は「合併特例法」で定められる(地方自治法ではない)
地方公共団体の種類のうち、合併特例区のみは地方自治法ではなく合併特例法で定められています。
これは合併特例区が後から作られた地方公共団体だからです。
合併特例区は合併市町村の区域の全部もしくは一部に設けられる
合併特例区は合併市町村の区域の全部もしくは一部に設けることができます。
そのため、合併区の全部を特例区とすることもできます。
地方公共団体の名称
地方公共団体(都道府県や市区町村)はそれぞれ固有の名称を有しており、地方自治法が施行された日のものを現在も踏襲しています。
都道府県の名称変更について
そして、地方公共団体の名称を変更するには法律によって名称を変更する必要があります。
そして、この都道府県の名称変更には住民投票が必要です。
憲法第95条で定める特別法に当てはまるからです。
一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。
憲法第95条
都道府県の名称変更は法律で定める必要がある
都道府県の名称変更は法律で定める必要があります。
都道府県の名称変更は国家行政に重体な影響を与えるためです。
地方公共団体の組合の名称は「規約」で定める
地方公共団体の組合の名称は「規約」で定める必要があります。
規約とは、組合の業務運営及び事務執行に関して、組合員間を規律する自治規範を指します。
イメージとしては、条例は区域内全部に対して、規約は組織内部に対して効力を発揮します。
市町村・特別区・財産区の名称変更について
市町村・特別区・財産区が名称変更を行うためには、条例で定める必要があります。
さらに、この条例を定める前にあらかじめ知事と協議する必要があります。
地方自治法第3条で定められているからです。
・都道府県以外の地方公共団体の名称を変更しようとするときは、この法律に特別の定めのあるものを除くほか、条例でこれを定める。
・地方公共団体の長は、前項の規定により当該地方公共団体の名称を変更しようとするときは、あらかじめ都道府県知事に協議しなければならない。
地方自治法 第3条第3項・第4項
地方公共団体の組合の名称
地方公共団体の組合の名称はそれぞれの規約により定められます。
地方自治法第287条で定められているからです。
一部事務組合の規約には、次に掲げる事項につき規定を設けなければならない。
・一部事務組合の名称
地方自治法 第287条の1
地方公共団体の事務所
都道府県・市町村・特別区は、事務所の位置を定めたり、変更する際は議会の出席議員の3分の2以上の同意を得て条例で定める必要があります。
地方自治法第4条で定められているからです。
地方公共団体は、その事務所の位置を定め又はこれを変更しようとするときは、条例でこれを定めなければならない。
第1項の条例を制定し又は改廃しようとするときは、当該地方公共団体の議会において出席議員の三分の二以上の者の同意がなければならない。
地方自治法 第4条
事務所の設置は議会の特別議決が必要となる(過半数の同意では足りない)
事務所の設置は議会で3分の2以上の同意を得る必要があります。
地方公共団体の事務所に住民投票は必要ない
地方公共団体の事務所に住民投票の必要はありません。
事務所の設置は、特定の自治体だけでなく日本全国の全ての自治体に適用されるからです。
一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。
憲法第95条
地方公共団体の事務所は住民の利用で最も便利な場所に作られる
地方公共団体が、事務所を設置する場所は、住民サービス向上に役立つ場所でなくてはいけません。
これは地方自治法第4条2項で定められているからです。
前項の事務所の位置を定め又はこれを変更するに当つては、住民の利用に最も便利であるように、交通の事情、他の官公署との関係等について適当な考慮を払わなければならない。
地方自治法 第4条第2項
具体的には、
- 交通事情を考慮すること
- 他の官公署との関係を考慮すること
例えば、駅からめちゃくちゃ遠くて誰も通えない山奥に立てたり、やたら密集して同じ機能を持つ地域事務所を建てまくることはできません。
法令によって保健所、警察署その他の行政機関の設置を行う
普通地方公共団体の長は、前条第一項に定めるものを除く外、法律又は条例の定めるところにより、保健所、警察署その他の行政機関を設けるものとする。
地方自治法 第156条
地方公共団体が設置できる建物
組織 | 都道府県 | 市区町村 |
事務所 | 支庁及び地方事務所 | 支所および出張所 |
保健所、警察署 | 法律または条例で設置できる |
保健所や警察署を法律や条例で設置する場合、過半数の議決を必要とします。
支庁と支所の違い
普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務を分掌させるため、条例で、必要な地に、都道府県にあつては支庁(道にあつては支庁出張所を含む。以下これに同じ。)及び地方事務所、市町村にあつては支所又は出張所を設けることができる。
地方自治法 第155条
支庁と支所の違いは地方自治法第155条で定められています。
支庁とは
支庁とは、都道府県知事の権限に属する事務を分掌させるため、必要な地に条例により設けられる都道府県の総合出先機関をさします。
支所とは
会社・役所で、本社・本庁から離れた所に設置され、その指示によって業務を取り扱う所を指します。
都道府県の事務所設置
都道府県は支庁や地方事務所、支所・出張所を必要な地に条例で設けられます。
大都市地域特別区設置法(大都市地域における特別区の設置に関する法律)
大都市地域特別区設置法(大都市地域における特別区の設置に関する法律)とは、同一道府県ないの関係市町村の総人口が200万人以上の指定都市などに負いて、特別区を設置するための手続きを定めた法律です。
これにより東京都以外の道府県でも、指定都市単独、もしくは指定都市と隣接する市町村域を合わせて総人口200万人以上であれば特別区が設置できる。
特別区の設置方法
市町村長・都道府県知事が、関係着かの議決を経て特別区設置協議会を設置します。
特別区を設置するための根拠法は大都市地域特別区設置法
特別区の設置には、指定都市と隣接する区市町村の総人口200万人以上が条件
指定都市だけでなく隣接区市町村を合わせても大丈夫
特別区の設置は、同一の都道府県内でしか行えない
特別区の設置は、同一の都道府県内でしか行えません。